この記事はこんな人におすすめ:
運転していなかったのに、賠償額を減らすと説明された人
家族や友人が運転する車に同乗して事故に遭った人
同乗者自身の過失と「被害者側の過失」の違いを知りたい人
交通事故の同乗者でも、事情によって損害賠償額が減額されることがあります。 同乗者自身の行動が事故や被害の拡大に関係する場合のほか、運転者との関係から、その運転者の過失が「被害者側の過失」として考慮される場合があるためです。ただし、同じ車に乗っていたというだけで、運転者と同じ割合の減額になるわけではありません。この記事では、主に同乗者が相手車両側へ賠償請求する場面を念頭に、減額の理由と確認事項を整理します。
目次
同乗者の減額では二つの問題を分ける
運転者の過失が「被害者側の過失」になる場合
友人・同僚の車への同乗ではどう考えるか
同乗者自身の行動が問題になる場合
減額を説明されたときに確認する資料
まとめ:運転していないことだけでも、同乗していたことだけでも決まらない
同乗者の減額では二つの問題を分ける
同乗者自身の行動が問題になる場合
過失相殺とは、被害者側の事情も考慮し、損害を公平に分担するために賠償額を減らす仕組みです。
同乗者については、事故の発生に関係する行動のほか、けがを大きくした事情が問題になることがあります。運転操作をしていなくても、本人の行動についての検討がなくなるわけではありません。
ただし、減額の説明を受けたときは、具体的にどの行動が、事故や損害の拡大にどう関係したとされているのかを確認する必要があります。
運転者の過失を同乗者側で考慮する場合
もう一つは、同乗者自身に運転上の落ち度がなくても、一定の関係にある運転者の過失が考慮される問題です。これが「被害者側の過失」です。
指定の実務書では、被害者と身分上又は生活関係上一体とみられる関係にある人の過失が、被害者側の過失として問題になると説明されています。
「あなた自身の行動に問題がある」という説明と、「運転者との関係から運転者の過失を考慮する」という説明は、分けて確認しましょう。
運転者の過失が「被害者側の過失」になる場合
夫婦では運転者の過失が考慮されることがある
たとえば、夫が運転し妻が同乗する車と、別の車が衝突し、妻がけがをした場面を考えます。妻が相手車両側へ請求するとき、夫の過失が被害者側の過失として考慮される場合があります。
これは、妻が実際に運転をしていたと扱うものではありません。夫婦の関係と損害の公平な分担という観点から、賠償額を検討するものです。
ただし、法律上の夫婦であっても、婚姻関係が既に破綻しているような事情がある場合には、同じ結論になるとは限りません。書籍も、夫婦という名称だけでは処理できない例外に触れています。
内縁関係や親族関係でも実態を確認する
内縁関係でも、身分上・生活上の一体性が認められれば、被害者側の過失が問題になります。一方、「交際している」「親族である」といった呼び方だけで、結論が決まるものではありません。
書籍は、その他の親族について、同居の有無、生計を共にしているか、交友状況、同乗に至る経緯などを具体的に検討すると説明しています。きょうだいでも、生活関係が別であることなどから、一体性を否定した例が紹介されています。
家族関係の名称だけでなく、事故当時の生活や経済面の実態が判断材料になります。
なぜ本人以外の過失まで考慮するのか
書籍では、相手方が全額を支払った後に同乗車の運転者へ負担を求め、その結果が同じ生活単位に戻ってくるような関係をまとめて処理する必要性などが説明されています。
そのため、単に「親しいかどうか」だけで判断するものではありません。生活関係の一体性を含め、なぜその運転者の過失を同乗者側で考慮するのが相当なのかが問題になります。
友人・同僚の車への同乗ではどう考えるか
同じ車に乗っただけでは運転者の過失を引き継がない
指定の実務書は、単に友人や同僚の車へ同乗しただけでは、その人の過失を被害者側の過失とすることはできないと説明しています。
したがって、「乗っていた車の運転者にも過失があるので、同乗者も同じ割合だけ減額する」という説明については、その関係を確認する必要があります。
同乗車の運転者に過失があることと、その過失を同乗者への賠償額に反映できることは、別の問題です。
共同運転や危険な運転への関与は別に検討する
一方で、友人や同僚であれば、どのような事情があっても減額されないという意味ではありません。
書籍には、共同でドライブを計画して交代で運転した場合など、運転に共同して関わる事情が問題になった例が紹介されています。また、危険な運転に関する同乗の態様・経緯によっては、同乗者側の行動が検討対象になります。
ただし、交代で運転した経験があるだけで必ず減額されると決めつけず、その日の計画、運転への関与、事故に至る事情を確認します。単なる送迎への同乗と、共同して危険な運転に関わった場面を混同しないことが大切です。
同乗者自身の行動が問題になる場合
飲酒運転などの危険を知っていた場合
書籍には、一緒に飲酒した友人が飲酒後に運転する危険な状態を知りながら同乗した場面などが、検討例として挙げられています。
ここでは、運転者が飲酒していたという事実だけでなく、同乗者が何を知り、どのような経緯で同乗したかが重要です。本人が危険を認識していたかなどの事実を確認せず、一律の割合で減額するものではありません。
事故前の行動、運転を始めた経緯、会話などを、事実と推測を分けて整理しましょう。
シートベルトの不着用は損害との関係を確認する
指定の実務書は、シートベルトの不着用について、事故の態様やけがの部位・程度によって、損害の発生・拡大への影響が問題になると説明しています。
事故を起こした原因ではなく、けがを大きくしたかという観点です。不着用という事実だけで減額幅が一律に決まるわけではなく、受けた被害との関係を確認します。
座席位置、衝突の状況、身体の動き、けがの内容などが関係します。自己判断で医学的な因果関係を決めず、事故資料と医療資料を踏まえて検討する必要があります。
減額を説明されたときに確認する資料
まず誰の、どの過失を理由にしているか尋ねる
減額の説明が曖昧な場合は、次の点を分けて確認します。
同乗者自身の行動を問題にしているのか、運転者の過失を考慮しているのか
運転者の過失を考慮する場合、どの関係・事実を根拠にしているのか
運転者にどのような過失があり、その割合をどう判断したのか
同乗者自身の行動と、事故や損害の拡大との関係は何か
被害者側の過失を考慮する関係が認められるとしても、運転者の過失割合まで当然に正しいとは限りません。事故の起き方についての確認も必要です。
関係・事故状況・けがの資料を分けて整理する
確認する内容 | 整理する資料や事情 |
|---|---|
運転者との関係 | 同居・別居、生計、婚姻関係の実態、同乗の経緯 |
運転への関与 | 旅行や移動の計画、交代運転の状況、事故前の会話 |
事故の発生状況 | ドライブレコーダー、現場写真、双方の説明 |
同乗者の行動 | 座席位置、シートベルト、危険の認識に関する事実 |
被害との関係 | 診断書など、けがの部位・程度を確認する資料 |
減額の内容 | 保険会社の提示書、減額理由の説明、計算の内訳 |
すべての資料が一律に必要という意味ではありません。主張されている減額理由に対応するものから整理します。関係のない私生活の情報まで広く提出するのではなく、何を確認するための資料かを明確にしましょう。
なお、相手車両側への請求、自分が乗っていた車の運転者への請求、各種保険の給付は、同じ前提で処理できるとは限りません。本稿の減額の説明だけで、すべての請求先から受け取れる額を決めないようにしてください。
まとめ:運転していないことだけでも、同乗していたことだけでも決まらない
同乗者の減額では、本人の行動による問題と、運転者の過失を被害者側の過失として考慮する問題を分けます。夫婦や親族、友人といった関係も、具体的な生活実態や同乗の経緯に即した検討が必要です。
減額の理由と根拠となる事実を確認し、事故資料・関係資料・提示書を対応させて整理しましょう。 説明に納得できない場合は、その資料をもとに弁護士へ相談できます。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。