この記事はこんな人におすすめ:
事故でけがをした子どもの通院に付き添い、仕事を休んだ人
欠勤・早退で減った給与や、有給休暇の扱いが気になる人
保険会社に何を伝え、勤務先にどのような資料を頼めばよいか知りたい人
子どもの交通事故による通院に付き添って仕事を休んだ場合、親の減収は、付き添いに関する費用として検討する問題です。 子ども本人に収入がないことを理由に、親の負担まで検討対象から外れるわけではありません。ただし、休んだ日の給与がすべて当然に補償されるとは限らず、付き添いの必要性、休業の実態、減収額を整理する必要があります。この記事では、給与所得のある親を中心に、確認するポイントと資料の残し方を説明します。
目次
子ども本人の休業損害と親の減収は分けて考える
親の減収は付き添い費用との関係で確認する
欠勤・遅刻・早退・有給休暇の扱いを整理する
通院への付き添いと仕事を休んだ理由を記録する
勤務先に確認したい資料と保険会社への伝え方
まとめ:通院日・休業日・給与への影響を対応させる
子ども本人の休業損害と親の減収は分けて考える
学校を休んだことと収入が減ったことは同じではない
休業損害は、事故によって仕事を休むなどして、得られたはずの収入を失ったことに関する損害です。就労の実態がない幼児や児童などには、原則として本人の休業損害は認められません。
もっとも、学生でもアルバイト収入があった場合などは別の検討が必要です。「子ども」「学生」という呼び方だけで決まるものではありません。
子どもの付き添いで生じた親の負担は別の問題
子どもに収入がなくても、親は付き添いのために仕事を休み、給与が減ることがあります。これは、子どもが学校を休んだこととは区別して整理します。
事故による損害の項目には、入通院や自宅での付添看護費があります。したがって、子ども本人の休業損害がないことと、付き添いに関する費用を検討しなくてよいことは同じではありません。
保険会社へは、「子ども本人の休業損害を求めている」のか、「親が付き添うために生じた減収を伝えている」のかが分かるように説明しましょう。
親の減収は付き添い費用との関係で確認する
自賠責には、看護料の定額を超える休業損害の取扱いがある
国土交通省の自賠責支払基準では、自宅・通院看護について、医師が看護の必要性を認めた場合、近親者等の看護料は1日2,100円とされています。12歳以下の子どもの通院等に近親者等が付き添った場合には、医師の証明を要しない扱いです。
さらに、近親者等に休業損害が生じ、資料によってこの定額を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とする定めがあります。
そのため、「通院の付き添いは1日2,100円だから、それ以上は一切検討できない」とは限りません。 親の減収がある場合は、勤務先の資料などをそろえ、その取扱いを確認します。
一方、この説明は自賠責の支払基準についてのものです。裁判上の付添費の一般的な日額や、すべての事故に共通する上限を示しているわけではありません。
定額の看護料と減収額を当然に足せるわけではない
上記の規定は、定額の看護料に親の減収額を無条件で上乗せするという内容ではありません。また、勤務先の証明があれば、休んだ日数や減収額のすべてがそのまま認められると決まるわけでもありません。
保険会社から提示を受けたら、次の点を確認しましょう。
自賠責の看護料なのか、別の基準による付添費の提示なのか
どの通院日について付き添いを認めているのか
親の減収資料を検討したうえでの金額なのか
認められない部分がある場合、その理由は何か
日額の数字だけを比べず、何に対する費用で、何日分を計算しているかまで確認することが大切です。
欠勤・遅刻・早退・有給休暇の扱いを整理する
仕事を休んだ方法と給与への影響を分けて確認する
同じ「通院のために休んだ」場合でも、終日欠勤、数時間の早退、有給休暇の使用などによって、勤務記録や給与への影響は異なります。
まず勤務先に確認し、次のように事実を整理しましょう。この表は記録の整理方法であり、それぞれの補償額を決める表ではありません。
勤務上の扱い | 確認したい内容 |
|---|---|
終日欠勤 | 欠勤日、給与から控除された額と計算方法 |
遅刻・早退・時間単位の欠勤 | 休んだ時間、給与への影響、通院との対応 |
有給休暇 | 使用日、終日・半日・時間単位の別、残日数の変化 |
勤務日の振替・シフト変更 | 実際に働いた日、収入が減ったかどうか |
会社独自の休暇制度 | 有給か無給か、給与・手当への影響 |
給与が減っている場合には、通常の支給額との差額がすべて付き添いによるものかも確認します。別の理由の欠勤や、支給項目の変更が含まれている場合は分けてください。
有給休暇は「減給がない」という説明だけで整理を終えない
付き添いのために有給休暇を使った場合は、給与が通常どおり支払われていても、使用した日と目的を残しておきましょう。
ただし、けがをした本人が有給休暇を使った場合と、付き添う親が使った場合を同じものとして扱わないことが必要です。 親の有給休暇については、付添費との関係でどのように評価するのか、資料を示して個別に確認してください。
有給休暇を使えば必ず通常給与相当額が加算される、あるいは給与が減っていなければ付き添い費用もすべて認められない、と一律に考えることは避けましょう。
通院への付き添いと仕事を休んだ理由を記録する
通院日数と親が仕事を休んだ日数を対応させる
子どもの通院日数と、親の欠勤日数が一致するとは限りません。親の休日に通院した日もあれば、別の家族が付き添った日、半日だけ仕事を休んだ日もあるでしょう。
次の内容を日付ごとにまとめることを勧めます。
子どもが受診した日と医療機関
実際に付き添った人
移動、受付、診察、帰宅に要した時間
子どもの状態と、付き添いで手伝った内容
親が休んだ時間と勤務先での扱い
たとえば、午前中の受診でも移動や待ち時間が長くなったのであれば、その事情を記録します。半日の付き添いを終日休業として認めてもらえるかどうかを、受診時刻だけで決めるのではなく、勤務時間や移動も含めて説明するためです。
付き添いが必要だった事情を具体化する
年齢、けがの状態、移動の支援、病院から受けた説明などを整理してください。「親だから」という説明だけでなく、一人での通院が難しかった事情や、実際の役割が分かる記録にします。
父母が交代で付き添った場合は、それぞれの担当日を分けます。同じ日に二人とも休んだ場合には、それぞれ何をする必要があったかを記録しましょう。二人が休んだという事実だけで、二人分の減収が当然に認められるとは考えず、個別の取扱いを確認します。
これらの記録は、付き添いと休業のつながりを説明するための提案です。記載項目がすべてそろえば認められるという意味ではありません。
勤務先に確認したい資料と保険会社への伝え方
勤務先には、付き添いによる休業であることを正確に伝える
給与所得者の休業を説明する資料として、勤務先の証明、源泉徴収票、給与明細などがあります。親の減収を説明する場合も、保険会社に求められている書式・記載事項を確認したうえで、勤務先に協力を依頼しましょう。
特に、次の点が分かる資料を整理します。
事故前の給与と、付き添いによる休業があった月の給与
欠勤・遅刻・早退・有給休暇の使用状況
休業した日の給与が支払われているか、減額されたか
減額がある場合の金額と計算の内訳
親自身がけがをして休んだように記載せず、子どもの通院への付き添いが理由であることを明確にしてください。 所定の証明書が使えない、勤務先が一部の事項を証明できないといった場合は、どの資料で補えるかを保険会社や弁護士に確認します。
証明書と通院・付き添いの記録を一緒に説明する
勤務先の資料は、休業や減収を説明するものです。それだけで子どもへの付き添いが必要だったことまで証明できるとは限りません。
通院記録と親の勤務記録を対応させ、「この日の付き添いのために、この時間仕事を休み、この額の減収があった」と整理すると、確認すべき点が明確になります。
保険会社から費用を認めないと言われた場合は、付き添いの必要性、休んだ時間、減収の有無・額のどこが問題なのかを確認しましょう。その回答に応じて、追加する資料を検討します。
まとめ:通院日・休業日・給与への影響を対応させる
子どもの通院に付き添うために生じた親の減収は、子ども本人の休業損害と分け、付き添い費用との関係で検討します。自賠責には定額の看護料を超える休業損害についての取扱いもありますが、減収額の全額補償や定額との単純加算が約束されるわけではありません。
通院日、付き添った人、仕事を休んだ時間、給与への影響を対応させて記録しましょう。 有給休暇や両親が同時に休んだ場合など、評価に迷う事情があるときは、勤務先の資料と付き添いの記録を持って弁護士に相談する方法があります。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。