この記事はこんな人におすすめ:
数か月通院したのに、慰謝料の対象日数が短く計算されている人
通院期間と実際に通院した日数の違いを知りたい人
通院頻度が慰謝料にどう影響するか確認したい人
交通事故の入通院慰謝料は、実際に通院した日数だけで一律に決まるものではありません。 自賠責の支払基準と裁判で用いられる算定基準では、期間や日数の扱いが異なります。また、長期にわたる通院では、症状や治療内容、通院頻度も検討されます。まず「どの基準で、どの期間・日数を使った計算なのか」を分けて確認しましょう。
目次
通院期間と実通院日数は何が違う?
自賠責基準では日額と対象日数を確認する
裁判基準では入通院期間を基本に考える
通院が長期化した場合の3倍・3.5倍の考え方
通院頻度は慰謝料のために決めない
提示された慰謝料を確認するための資料
まとめ:日数だけでなく基準と治療の経過を確認する
通院期間と実通院日数は何が違う?
「3か月通院した」と「30日通院した」は、違う意味で使われることがあります。期間と日数を混ぜると、計算の前提が分からなくなります。
用語 | 確認する内容 |
|---|---|
通院期間 | 通院治療を行った期間の長さ |
実通院日数 | その期間中に実際に通院した日数 |
入院期間・日数 | 入院して治療を受けた期間・日数 |
慰謝料算定に用いる期間・日数 | 適用する基準と治療の経過を踏まえて、計算の基礎とする期間・日数 |
例えば、説明用の仮定として、通院治療の期間が90日で、その間に実際に通院した日が20日だったとします。この場合、「90日」と「20日」は異なる事実を表しています。
通院期間が90日あることと、慰謝料が必ず90日分の日額計算になることは別です。 反対に、実通院日数が20日だから、どの基準でも20日分しか考慮しないということでもありません。
実際に治療を受けた期間と、損害賠償上どこまでを算定の基礎とするかが争われる場合もあります。まずは実際の受診日を整理し、その後に計算上の扱いを確認します。
自賠責基準では日額と対象日数を確認する
公表されている日額は4,300円
国土交通省が公表する自賠責の支払基準では、傷害慰謝料は1日につき4,300円とされています。基本となる計算の形は、次のとおりです。
自賠責基準の傷害慰謝料=4,300円×慰謝料の対象となる日数
ただし、対象日数は、けがの状態や実際に治療を受けた日数などを考慮して、治療期間の範囲内で判断されます。通院した日数、病院に行った回数、治療期間のいずれかを、事情を問わずそのまま掛ける説明ではありません。
例えば、対象日数を40日と評価するという前提がある場合、計算額は4,300円×40日=17万2,000円です。これは計算方法を示す仮定例であり、20日通院すれば必ず40日分になるという意味ではありません。
日額と対象日数を別々に確認する
提示額に疑問がある場合は、「日額はいくらか」と「対象日数を何日としたか」を分けて確認します。
対象日数については、実治療日数と治療期間のどちらをどのように考慮したのか、治療期間の一部を対象外としたのか、その理由を確認しましょう。自賠責の傷害には治療費や休業損害等も含めた支払限度額があるため、慰謝料の計算結果と、実際に受け取る額を同一視しないことも必要です。
なお、ここで示した日額は参照した公表基準によるものです。過去の事故では適用される基準の時期も確認してください。
裁判基準では入通院期間を基本に考える
原則は「通院1回当たり」の計算ではない
指定の専門書では、裁判実務で参照される「赤い本」「青本」の傷害慰謝料は、基本的に入通院期間を基準として算定すると説明されています。
したがって、裁判基準を用いた算定は、自賠責の日額4,300円に通院日数を掛ける方法とは異なります。日額計算の金額と、入通院期間を基礎とする金額を、計算方法を確認せずに比較しないことが大切です。
入院がある場合には、その期間も区別して整理します。「入院と通院を合わせて数か月」という情報だけでは、算定の前提が十分に分かりません。
けがの内容によって参照する表が異なる
専門書では、赤い本の別表Ⅰを原則とし、他覚所見のないむちうち等や軽度の打撲・捻挫では別表Ⅱを用いる考え方が紹介されています。他覚所見とは、本人の訴えだけでなく、診察や検査などによって客観的に確認される所見のことです。
同じ通院期間でも、どの表を用いるかや、けがの程度による調整が問題になります。「3か月通院した」という情報だけで、すべての人の慰謝料額が同じになるわけではありません。
本稿は期間と日数の関係を扱うため、入院月数と通院月数を組み合わせた金額の一覧表は掲載していません。
通院が長期化した場合の3倍・3.5倍の考え方
実通院日数から算定上の期間を検討することがある
専門書が紹介する赤い本の考え方では、通院が長期にわたる場合、症状・治療内容・通院頻度を踏まえて、実通院日数の3.5倍程度を、慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあります。
他覚所見のないむちうち等については、同様に長期通院の場合、実通院日数の3倍程度を目安とすることがあると説明されています。
ここでの「3倍」「3.5倍」は、慰謝料額をその倍率で増やす意味ではありません。 実際に経過した通院期間を、算定上どのように評価するかという問題です。
例えば、実通院日数30日に3を掛ければ90日になります。しかし、これは日数の換算例にすぎず、30日通院したすべての事案で算定期間が90日に決まるわけではありません。
すべての通院に機械的に適用するルールではない
専門書は、長期通院における症状・治療内容・頻度を考慮する仕組みとして説明しています。初めからすべての事故を実通院日数の3倍や3.5倍で計算するものではありません。
通院間隔が空いていても、どのような治療・経過観察が行われたのかを確認する必要があります。一方、期間が長いという理由だけで、その全期間が当然に算定の基礎になるともいえません。
相手方が日数を換算して提示している場合は、どの基準を使い、どの症状や治療内容を理由に換算したのかを確認しましょう。
通院頻度は慰謝料のために決めない
慰謝料を増やすことを目的に、必要性を離れて通院回数だけを増やす考え方は適切ではありません。慰謝料はけがや治療による精神的苦痛に対する賠償であり、通院回数に応じた報酬ではないためです。
通院の頻度や治療方針は、症状を正確に医師へ伝えたうえで相談しましょう。仕事や家庭の事情で予定どおり受診できない場合も、その事情と症状を伝え、対応を相談することが考えられます。
資料整理の面では、受診日だけでなく、治療内容、症状の変化、受診間隔が空いた理由もメモしておく方法があります。ただし、本人のメモだけで治療の必要性や適切な算定期間が決まるわけではありません。
「週に何回通えば満額になる」という一律の回数を目標にせず、必要な治療と、その経過を正確に残すことを優先してください。
提示された慰謝料を確認するための資料
診断書、診療報酬明細書、受診日が分かる領収書や記録、保険会社の提示書などを整理します。自分の記憶だけで通院日数を数えると、抜けや重複に気づきにくくなります。
提示書を読む際は、次の点を順に確認しましょう。
自賠責の支払基準など、どの基準による算定か
入院期間、通院期間、実通院日数がそれぞれどう記載されているか
日額計算なら、日額と対象日数はいくつか
期間を基礎とした計算なら、どの表・算定期間を用いたか
日数による換算や減額がある場合、その理由は何か
必要な資料が保険会社に提出済みの場合は、保有資料と写しの入手方法を確認します。計算の前提が分からないときは、説明を求めたうえで、提示書と治療関係の資料を持って弁護士に相談できます。
まとめ:日数だけでなく基準と治療の経過を確認する
通院期間、実通院日数、慰謝料の算定に用いる期間・日数は区別して考えます。自賠責の日額計算と、入通院期間を基本とする裁判基準も同じではありません。
提示額を確認する際は、「何日通ったか」だけでなく、適用基準と対象期間、その判断理由を確認しましょう。 通院頻度や期間の評価に疑問があれば、治療の経過が分かる資料を整理して相談することが次の一歩になります。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。