この記事はこんな人におすすめ:
友人や知人の車に無料で乗せてもらい、事故でけがをした人
「好意で乗せてもらったのだから賠償金は減る」と説明された人
飲酒や危険な運転を知っていたことが、賠償に影響するか確認したい人
無料で車に乗せてもらったことだけを理由に、交通事故の賠償金が減額されるわけではありません。 問題になるのは、同乗者が事故の危険性を認識していたか、自ら危険を増やす行動をしたかなどの具体的な事情です。感謝や遠慮の気持ちと、法律上の減額理由は分けて考える必要があります。この記事では、好意同乗の意味と減額が問題になる場面、提示額を確認する際のポイントを説明します。
目次
好意同乗とは?無償で乗せてもらっただけでは減額されない
減額が問題になる同乗者の認識・行動
好意同乗による減額率は一律ではない
家族の同乗・自分の車への同乗は別の論点もある
好意同乗を理由に減額を提示されたときの対応
まとめ:乗せてもらった事実と事故への関与を分ける
好意同乗とは?無償で乗せてもらっただけでは減額されない
好意や無償によって車に同乗すること
好意同乗とは、好意によって、または無償で他人を車に同乗させることをいいます。「無償同乗」と呼ばれることもあります。
たとえば、友人に自宅まで送ってもらうことや、知人の車で一緒に出かけることが考えられます。こうした場面で事故が起きると、けがをした人が「乗せてもらった立場だから、請求するのは申し訳ない」と感じることもあるでしょう。
しかし、運転者への感謝と、事故によって生じた損害の賠償は別の問題です。
無料だったという事情だけでは減額の根拠にならない
参照書籍では、単なる好意・無償同乗というだけで損害の減免を行わず、同乗者について事故の発生に関わる具体的な事情がある場合に減額を検討するという実務の考え方が説明されています。
「無料で乗せてもらった」「友人の車だった」という事情だけで、慰謝料などを一律に減らす説明は適切ではありません。
もっとも、好意同乗だけでは減額されないことと、請求した費用がすべて認められることは同じではありません。事故との関係、損害の内容、ほかに減額を検討すべき事情があるかは、別に確認する必要があります。
減額が問題になる同乗者の認識・行動
事故の危険性が高い事情を知りながら同乗した場合
書籍が示す一つ目の場面は、事故が起きる危険性が高い客観的な事情を知りながら、あえて同乗した場合です。
書籍で紹介されている裁判例の説明では、運転者の無免許、飲酒、疲労などが挙げられています。ただし、こうした言葉に当てはまる事情が一つあれば、同乗者の賠償金が自動的に減るという意味ではありません。
確認したいのは、事故当時にどのような危険があり、同乗者が何を認識していたかです。事故後に初めて知ったことと、乗る前から知っていたことは区別しなければなりません。
運転者に問題があったことだけでなく、同乗者自身が知っていた事情を具体的に確認する必要があります。
同乗者が危険な運転をあおった場合
二つ目は、同乗者自身が事故の危険を増やす状況を作った場合です。書籍では、スピード違反をあおった場合などが例として挙げられています。
ここでは、単に車に乗っていたことではなく、同乗者の発言や行動が問題になります。
たとえば、「急いでほしいと伝えた」とされている場合でも、実際にどのような言葉を使い、運転者がどう応じ、その後どのような運転が行われたかを確認する必要があります。この例は、事実を整理するための仮定であり、特定の発言があれば必ず減額されるという意味ではありません。
認識と行動をひとまとめにしない
危険を知っていたかという問題と、危険な運転を促したかという問題は分けて整理しましょう。
検討する場面 | 確認したい事実 |
|---|---|
危険を知って同乗したと主張されている | どのような危険があったか、いつ何を知ったか |
危険を増やしたと主張されている | どの発言・行動が問題とされているか、運転にどう関係したか |
運転中に危険な状態になった | いつ状況が変わったか、その前後でどのようなやり取りがあったか |
危険な運転への抗議や中止を求める発言をした場合も、その内容を整理しておくと、当時の状況を説明する資料になります。ただし、抗議した事実だけで減額が必ず否定されるとは限りません。
好意同乗による減額率は一律ではない
「同乗していたら何割減る」という基準は使わない
好意同乗が問題になる事故でも、同乗者の認識や行動、事故の経過はそれぞれ異なります。そのため、無償で乗っていた人について共通の減額率を当てはめることはできません。
書籍にも複数の裁判例が紹介されていますが、その判断は各事件の事情に基づくものです。別の裁判例で採用された割合を、そのまま自分の事故に適用するのではなく、前提となった事情を比較する必要があります。
減額率を確認する前に、「何を理由に減額するのか」を確認しましょう。
複数の事情を含む裁判例を、好意同乗だけの割合と読まない
書籍には、飲酒の経緯、速度超過、シートベルト不着用など、複数の事情を含む事例が掲載されています。
このような事例の減額率を見て、「好意同乗だけでこの割合が減る」と理解すると、判断の理由を取り違えることになります。
自分の事案でシートベルトなど別の事情も指摘されている場合は、好意同乗に関する主張と分け、どの事情がどのように減額へ反映されているかを確認してください。
家族の同乗・自分の車への同乗は別の論点もある
家族関係に関する減額と混同しない
書籍では、家族などの同乗について、運転者の過失を「被害者側の過失」として考慮する裁判例も紹介されています。これは、無料で乗せてもらったこと自体による減額とは別の検討です。
家族の車に乗っていて事故に遭った場合は、誰に賠償を請求する場面なのか、運転者との関係をどのように評価する主張なのかを確認しましょう。
本記事は、親族関係があれば必ず運転者の過失を同乗者に反映するという説明をするものではありません。家族関係が指摘されている場合は、同乗者の過失を扱う別の問題として検討する必要があります。
自分の車を他人に運転させていた場合
自分の車を知人に運転してもらい、自分は同乗していたという場面では、単なる好意同乗とは別に、自賠法上の「他人」に当たるかが問題になることがあります。
ここでいう「他人」は、日常の言葉でいう友人・家族かどうかではなく、自賠法上の賠償責任を考える際の法律上の区分です。
書籍では、同乗者自身が車の運行を支配し利益を得る「運行供用者」に当たり、その運行支配が直接的・顕在的・具体的である場合には、他人性が否定されることがあると説明されています。
「助手席にいたから常に保護される」「車の所有者だから一切請求できない」といった一律の判断は避ける必要があります。 車の所有関係や運転を任せた経緯、運行への関与を確認しましょう。
好意同乗を理由に減額を提示されたときの対応
減額の根拠となる事実と計算を確認する
提示書に「好意同乗による減額」と記載されていたら、次の点について説明を求めることが考えられます。
無償同乗という事実以外に、どの事情を理由としているか
危険を認識していた、または危険を増やしたと判断する資料は何か
参考にしている裁判例がある場合、自分の事案とどの点が共通するか
減額する割合と、その割合を適用する損害項目は何か
家族関係やシートベルトなど、別の事情も含めた減額なのか
説明が抽象的な場合は、「私のどの発言・行動が、減額の理由とされているのでしょうか」と、事実に即して確認しましょう。
乗車前から事故までの経過を整理する
確認に備えて、乗車を決めた経緯、運転者の状態、車内でのやり取り、事故までの経過を時系列にまとめる方法が考えられます。
資料としては、乗車前後のメッセージ、車内の音声を含むドライブレコーダー映像、同席者・同乗者が見聞きした内容、保険会社とのやり取りなどを確認します。
自分が見聞きしたことと、後から人に聞いたこと、推測したことを区別して記録してください。 覚えていない部分を埋めるために、話を合わせたり内容を作ったりしないことが大切です。
資料の評価や減額の理由に納得できない場合は、示談に同意する前に、提示書と当時の経過が分かる資料をそろえて弁護士への相談を検討しましょう。
まとめ:乗せてもらった事実と事故への関与を分ける
好意・無償で車に乗せてもらったことだけで、交通事故の賠償金が減額されるわけではありません。危険を認識して同乗した事情や、同乗者が危険を増やした事情などを、具体的に検討する必要があります。
減額を提示された場合は、割合だけを見るのではなく、どの事実が、どの理由で減額に結び付けられているかを確認してください。運転者への感謝や遠慮と、法律上の判断を分け、資料に基づいて検討することが大切です。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。