この記事はこんな人におすすめ:
複数の車が関係する事故で、誰に賠償を請求すればよいか分からない人
加害者同士が責任割合を争っていて、対応に困っている人
加害者の一人と先に示談してよいか確認したい人
複数の加害行為が関係して損害が生じ、共同不法行為が成立する場合には、各加害者がその損害について連帯して賠償責任を負います。 加害者同士の負担割合と、被害者が各加害者に請求できる範囲は別の問題です。ただし、複数の車や事故が関係しているだけで、全員にすべての損害を請求できるわけではありません。この記事では、共同不法行為の基本と、因果関係・過失相殺・示談について確認したい点を説明します。
目次
共同不法行為とは?複数の加害行為による損害
成立する場合、誰にどこまで請求できるか
複数の事故が関係するときの判断のポイント
被害者にも過失がある場合はどうなる?
加害者の一人と先に示談するときの注意点
複数の加害者・保険会社への対応で整理すること
まとめ:被害者への賠償と加害者間の負担を区別する
共同不法行為とは?複数の加害行為による損害
複数の行為が関係して一つの損害を生じさせる場合
交通事故では、一人の運転者の行為だけでなく、複数の人の行為が関係して被害が生じることがあります。
参照書籍は、複数の不法行為が競合して一個の損害が発生する場合について、民法719条が、一定の要件の下で各加害者に連帯した賠償責任を負わせると説明しています。
たとえば、車同士の衝突で同乗者や歩行者がけがをした場合や、連続する衝突によって被害が生じた場合に、共同不法行為の成否が問題になります。
「何台の車がいたか」だけでなく、それぞれの行為がどのようにつながり、どの損害を生じさせたかが重要です。
加害者同士の示し合わせが必須という意味ではない
「共同」という言葉から、加害者同士が相談して事故を起こした場合だけを想像するかもしれません。
しかし、書籍で紹介されている判例の考え方では、加害者同士の共謀や共同の認識が必須というわけではなく、行為の客観的な関連が問題になります。
もっとも、示し合わせが不要だからといって、同じ現場にいた人全員が責任を負うわけでもありません。各人の行為や損害との関係を検討する必要があります。
成立する場合、誰にどこまで請求できるか
加害者間の割合だけで、被害者への責任が分割されるとは限らない
共同不法行為によって各加害者が同じ損害の全額について責任を負う場合、被害者は、その一人に対して賠償対象となる損害の全額を請求することができます。
加害者の一人に資力がない場合などでも、ほかの責任を負う加害者に請求を検討できる点に、この仕組みの意味があります。
「自分の責任割合は一部なので、その割合の金額しか払わない」という説明が、被害者に対してそのまま通用するとは限りません。 ただし、共同不法行為が成立するか、その相手がどの損害について責任を負うかという前提の確認が必要です。
同じ損害を二重に受け取れるわけではない
複数の加害者に請求できることと、同じ損害の賠償を重ねて受け取れることは別です。
たとえば、説明のための仮定として、被害者の過失や既払金がなく、二人の加害者が同じ100万円の損害について全額の責任を負う場合を考えます。一人から100万円全額の賠償を受けた後、もう一人から同じ損害についてさらに100万円を受け取れるわけではありません。
この例は仕組みを説明するための仮定であり、実際の事故の賠償額や責任割合を示すものではありません。
加害者同士の精算は「求償」の問題
一人の加害者が賠償した後、ほかの加害者に負担を求めることを「求償」といいます。
書籍では、共同不法行為者間の負担部分と求償を、被害者への賠償とは別に説明しています。被害者に対して責任を負う範囲と、加害者間で最終的に誰がいくら負担するかは、同じ問題ではありません。
加害者同士の協議が続いている場合は、「被害者への支払義務を争っているのか」「加害者間の負担だけを争っているのか」を確認しましょう。
複数の事故が関係するときの判断のポイント
同じ場所で続いた事故と、別の時期の事故を区別する
書籍は、同時に起きた事故のほか、玉突き事故や、最初の衝突の直後に別の車による被害を受けた場面などを挙げています。一方、時間や場所が離れた複数の事故も区別して扱っています。
どの場面でも、単に「事故が二つある」というだけでは判断できません。事故の前後関係、時間・場所の近さ、各事故による損傷や症状などを確認する必要があります。
因果関係の確認が不要になるわけではない
共同不法行為には、複数の行為と損害との関係について、立証の負担を調整する側面があります。ただし、その扱いは成立する類型によって異なり、学説や裁判例でも検討されています。
そのため、「共同不法行為と主張すれば、誰の行為が損害に関係したかを一切説明しなくてよい」という理解は適切ではありません。
少なくとも、各事故の状況と、被害がどのように生じたかを整理することが重要です。治療中に別の事故に遭った場合は、先の事故後の症状、後の事故の直前・直後の状態、治療内容の変化を分けて確認しましょう。
交通事故後の医療過誤が問題になる場合
書籍には、交通事故と医療過誤が関係して一つの結果を生じさせた場合に、共同不法行為を認めた判例も紹介されています。
ただし、治療後に症状が悪化したというだけで、医療過誤や共同不法行為が成立するわけではありません。医療行為に過失があるか、交通事故と医療行為が結果にどう関係するかなど、個別の検討が必要です。
本記事では、交通事故と医療過誤があれば常に損害全体について連帯責任となる、という説明はしていません。
被害者にも過失がある場合はどうなる?
共同不法行為でも過失相殺は問題になる
被害者側にも事故に関する過失がある場合は、共同不法行為であっても過失相殺を検討します。
書籍では、複数の加害者の行為を一体として被害者の過失と比較する方法と、加害者ごとに被害者との関係で過失を評価する方法が説明されています。
どの方法を用いるかは、事故の構造や各行為の関係を踏まえた判断になります。
加害者同士の割合と被害者の過失を混同しない
提示された割合については、何を示す数字かを確認してください。
提示された割合 | 確認したい内容 |
|---|---|
被害者の過失割合 | 被害者のどの行動を評価し、どの事故との関係で算定したか |
加害者間の負担割合 | 加害者同士の精算の割合か、被害者への支払範囲の説明か |
結果への寄与割合 | 共同不法行為の成否や責任範囲について、どの根拠で用いているか |
割合を並べただけでは、被害者が受け取れる額は分かりません。 減額前の損害額、減額の根拠、既払金の反映まで、計算の過程を確認することが大切です。
加害者の一人と先に示談するときの注意点
支払いの対象と残る請求を確認する
一人の加害者と先に解決する場合は、その支払いが、どの損害について、どこまで解決するものかを確認します。
被害者が受けた支払いは、同じ損害についての残額に関係します。また、示談で誰に対するどの請求を放棄するかは、合意の内容による検討が必要です。
「この人との示談だから、ほかの人への請求には必ず影響しない」と考えるのは避けましょう。
清算条項・免除の対象を読む
書籍には、一人との和解で残債務を免除した際、ほかの加害者の残債務も免除する意思があった場合には、その効果が及ぶとした判例が紹介されています。
そのため、示談書では次の点を確認することが考えられます。
解決する相手と、対象となる事故・損害
今回の支払いが一部払いか、最終的な精算か
残額について請求しない相手と、その範囲
ほかの加害者に対する請求をどう扱うか
「一切の請求をしない」といった文言は、誰に対する何の請求を指すのか確認してから判断してください。 複数の加害者が関係する場合は、署名前に示談書全体の確認を受けることを検討しましょう。
複数の加害者・保険会社への対応で整理すること
事故の状況と支払いを、別々に整理すると確認しやすくなります。
事故の経過:衝突の順序、車両の位置、時刻・場所、映像や写真
被害の経過:事故ごとの症状、受診・治療の記録、損傷箇所
相手方の対応:各運転者・保険会社の連絡先、責任についての説明
支払いの状況:支払者、金額、対象費目、支払日
合意の状況:示談案、既に署名した書面、請求放棄に関する記載
この一覧は、どの事件でも同じ書類が必須という意味ではなく、事実を整理するための提案です。分からない点は推測で埋めず、映像・診療記録・相手方の説明などと区別して残してください。
保険会社間で説明が食い違う場合は、誰がどの損害について責任を認め、何を争っているかを整理したうえで、弁護士への相談を検討しましょう。
まとめ:被害者への賠償と加害者間の負担を区別する
共同不法行為が成立する場合には、複数の加害者が同じ損害について連帯して責任を負います。加害者同士の負担割合によって、被害者への責任が当然に分割されるわけではありません。
ただし、成立の有無、責任を負う損害の範囲、過失相殺の方法は、各事故の関係によって検討が必要です。事故の経過・支払済みの金額・示談の範囲を整理し、一人との合意が残る請求にどう関係するかを確認しましょう。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。