この記事はこんな人におすすめ:
交通事故後、片耳や両耳の聞こえが悪くなり、会話や仕事に支障がある人
耳鳴りが続いているものの、どのような検査や記録が必要か分からない人
難聴に加えて、めまい・ふらつきや耳の傷が残っている人
交通事故による耳の後遺障害には、難聴だけでなく、耳鳴り、平衡機能の障害、耳介の欠損などがあります。同じ「耳の不調」でも、検討する機能や認定の基準は異なります。
後遺障害の検討では、左右それぞれの聴力、症状に対応する検査結果、事故前後の変化を整理することが重要です。本記事では、聞こえにくさや耳鳴りを中心に、等級の考え方と確認したい資料を説明します。
目次
耳の後遺障害は、症状と原因を分けて確認する
難聴の等級は、片耳・両耳の状態と検査結果で判断する
聴力検査では、測定方法と複数回の結果が重要
耳鳴りでは12級相当・14級相当が問題になる
めまい・耳漏・耳介の欠損は、難聴と区別する
事故との関係と、生活・仕事への影響を整理する
申請前や非該当となったときに確認したい資料
まとめ:聞こえ方と残った症状を、それぞれ裏付ける
耳の後遺障害は、症状と原因を分けて確認する
「音が小さい」と「言葉が分かりにくい」は同じではない
聞こえにくさには、音そのものを捉えにくい場合と、音は聞こえても言葉を聞き分けにくい場合があります。「テレビの音量が大きくなった」「会話を聞き返すことが増えた」など、困っている場面を具体的に伝えることが大切です。
また、右耳と左耳で違いがあるのか、難聴に耳鳴りを伴うのか、めまいやふらつきもあるのかによって、確認する内容が変わります。
症状・障害 | 主な確認事項 |
|---|---|
難聴 | 左右の聴力、音の聞こえと言葉の聞き取り、原因となる損傷 |
耳鳴り | 音の性質、持続性、左右差、難聴との関係、耳鳴りの検査結果 |
めまい・ふらつき | 平衡機能の障害の有無、原因、検査所見、生活・仕事への支障 |
耳漏 | 耳から液体が出る状態の原因、持続性、治療後の経過 |
耳介の欠損 | 外から見える耳の欠損範囲、外貌への影響、聴力障害との関係 |
症状を一括して「耳の後遺症」とするのではなく、それぞれについて診断・検査・残存状態を確認します。
難聴は、障害がある場所によって種類が異なる
耳は外耳・中耳・内耳に分かれ、音の情報は神経を通って脳へ伝わります。どの部分に障害があるかによって、難聴の性質も異なります。
伝音難聴は、外耳や中耳で音を伝える働きに問題がある場合です。外傷性鼓膜穿孔や耳小骨の連なりの損傷などが、原因として問題になります。
感音難聴は、内耳やそれより中枢側の聴覚の経路に問題がある場合です。伝音性と感音性の両方の要素があるものは、混合性難聴と呼ばれます。
診断名だけで等級が決まるわけではありません。どのような損傷によって、どの程度の聞こえにくさが残ったかを、診察所見と検査結果に基づいて確認する必要があります。
難聴の等級は、片耳・両耳の状態と検査結果で判断する
片耳に残った聴力障害の等級
自賠責の等級表では、片耳の聴力障害について、次のような区分が定められています。以下は等級表の内容を読みやすく整理したものです。
片耳の聴力障害の状態 | 等級 |
|---|---|
聴力を全く失った場合 | 9級9号 |
耳に接するほど近くでなければ、大声を理解できない程度となった場合 | 10級6号 |
40cm以上離れると、普通の話し声を理解できない程度となった場合 | 11級6号 |
1m以上離れると、小声を理解できない程度となった場合 | 14級3号 |
ただし、この表は、自宅で声をかけて距離を測れば等級が分かるという意味ではありません。認定では、純音による聴力レベルや語音の聞き取りに関する検査結果に基づき、該当する程度を判断します。
例えば、日常会話ができる場面があるからといって、片耳の障害がないとは限りません。反対に、聞き返すことが多いという事実だけで、特定の等級に当たるともいえません。
両耳では、左右の組合せに応じた等級を確認する
両耳に障害が残った場合は、それぞれの耳の程度と組合せを確認します。代表例は次のとおりです。
両耳の聴力障害の状態 | 等級 |
|---|---|
両耳の聴力を全く失った場合 | 4級3号 |
両耳とも、耳に接するほど近くでなければ大声を理解できない程度となった場合 | 6級3号 |
両耳とも、40cm以上離れると普通の話し声を理解できない程度となった場合 | 7級2号 |
両耳とも、1m以上離れると普通の話し声を理解できない程度となった場合 | 9級7号 |
両耳とも、1m以上離れると普通の話し声を理解することが困難な程度となった場合 | 10級5号 |
両耳とも、1m以上離れると小声を理解できない程度となった場合 | 11級5号 |
このほか、片耳の聴力を全く失い、もう一方の耳にも一定の障害がある場合などの区分があります。上の表は全組合せを掲載したものではありません。
両耳の聴力障害は、右耳と左耳の等級を単純に足し合わせるものではありません。両耳の状態に対応する等級を確認します。事故前から片耳に障害があった場合も、事故前後の状態を区別して検討する必要があります。
聴力検査では、測定方法と複数回の結果が重要
純音聴力検査と語音聴力検査の役割
純音聴力検査は、高さの異なる音を用い、どの程度の強さで聞こえるかを調べる検査です。結果は、オージオグラムと呼ばれる図に記録されます。
空気を伝わる音を調べる気導聴力検査と、骨を通して伝わる音を調べる骨導聴力検査があり、その関係は難聴の種類や障害部位を検討する資料になります。
語音聴力検査では、言葉の聞き取りを調べます。音が聞こえるかという問題と、言葉を正しく聞き分けられるかという問題は異なるため、純音の数値だけでは十分に説明できない支障もあります。
検査の内容によっては、聴性脳幹反応検査(ABR)などが補足的に用いられます。ただし、すべての人にすべての検査が必要なわけではありません。必要性と結果の意味は、担当医に確認してください。
平均聴力の計算方法を混同しない
書籍では、自賠責で用いる平均純音聴力レベルについて、500Hz、1,000Hz、2,000Hz、4,000Hzの測定値から求める「6分法」が説明されています。
記号 | 測定する音の周波数 |
|---|---|
A | 500Hz |
B | 1,000Hz |
C | 2,000Hz |
D | 4,000Hz |
平均純音聴力レベルは、(A+2B+2C+D)÷6で求めます。
別の制度や資料で示された平均値を、そのまま自賠責の評価に使えるとは限りません。「平均聴力」という名称だけでなく、どの周波数を使い、どの方法で計算された数値かを確認することが大切です。
一度の検査結果だけを取り出さない
書籍では、聴力検査を日を変えて3回行い、原則として2回目と3回目の測定値を用いる取扱いが説明されています。検査間隔は7日程度とされ、結果の差が大きい場合には追加の検査が問題になります。語音聴力検査には、結果が適正と判断できる場合の例外があります。
このため、最も悪かった1回の結果だけで等級を主張したり、逆に一時的に良かった結果だけで障害がないと判断したりすることは適切ではありません。治療中の変化や検査条件も含めて、複数の結果を整理します。
検査日程は医療機関と相談し、認定に必要な測定方法や記録がそろっているかを確認しましょう。本人が独自に測った数値や、日常の聞こえ方の印象で医療機関の検査に代えることはできません。
耳鳴りでは12級相当・14級相当が問題になる
症状の強さだけでなく、難聴との関係を見る
耳鳴りは、外部に明らかな音源がないのに音を感じる状態です。「キーン」「ジー」といった感じ方、左右の違い、常に続くかどうかなどを具体的に伝えます。
書籍では、難聴に伴う耳鳴りについて、次のような相当等級の評価が説明されています。
耳鳴りの評価 | 検討される等級 |
|---|---|
耳鳴りの検査によって、難聴に伴う著しい耳鳴りが常時あると評価できる場合 | 12級相当 |
難聴に伴って耳鳴りが常時あることを、合理的に説明できる場合 | 14級相当 |
「耳鳴りがつらいから12級」「検査を受ければ12級」というものではありません。難聴との関係、症状の持続性、検査結果、受傷後の経過を併せて評価します。
また、難聴そのものが等級に該当しない程度でも、耳鳴りの検討が終わるとは限りません。書籍は、平均純音聴力レベルが40dB未満でも、耳鳴りに対応する周波数で聴力の低下が認められる場合があることを説明しています。平均値だけでなく、周波数ごとの結果を医師に確認することが重要です。
ピッチ・マッチ検査とラウドネス・バランス検査
耳鳴りの評価に関係する検査として、ピッチ・マッチ検査とラウドネス・バランス検査があります。
ピッチ・マッチ検査は、本人が感じる耳鳴りに近い音の高さや性質を調べるものです。ラウドネス・バランス検査は、その音と比較しながら耳鳴りの大きさを調べるものです。
これらは本人の聞こえ方との比較を含む検査です。耳鳴りを録音して第三者にそのまま聞かせるものではなく、検査を受けたという事実だけで事故との因果関係まで証明されるわけでもありません。
耳鳴りが始まった時期、治療による変化、聴力検査との関係を整理し、検査結果を医師がどのように評価しているか確認しましょう。
めまい・耳漏・耳介の欠損は、難聴と区別する
内耳の平衡機能の障害は、聞こえとは別の問題
内耳には、聞く働きだけでなく、身体の平衡を保つ働きに関係する器官があります。内耳の損傷による平衡機能障害は、神経系統の機能の障害として評価することが問題になります。
ただし、めまいがあるというだけで、内耳が原因だと判断できるわけではありません。頭部の受傷など、耳以外の原因も含めた医学的な確認が必要です。
「回転する感じ」「身体がふらつく」「歩行や作業を中断する必要がある」など、実際の症状と支障を伝えます。検査所見と障害の程度を確認せず、難聴や耳鳴りと同じ等級になると考えることはできません。
耳漏は、原因と治療後の状態を確認する
耳漏は、耳から液体が出る状態を指します。書籍では、外傷による鼓膜の穿孔と、それによる耳漏について、手術的な処置後に残る聴力障害や耳漏の状態に応じた評価が説明されています。
診断名や一時的な耳漏だけで判断するのではなく、治療内容、残存する症状、常時続くかどうかなどを確認します。耳鳴りとは異なる症状であり、資料上の表記も区別しましょう。
耳介の欠損と、外貌の傷あとの評価
耳介は、外から見える耳の部分です。自賠責の等級表には、片耳の耳殻の大部分を欠損したものとして12級4号が定められています。書籍では、耳介の軟骨部の2分の1以上の欠損が、この「大部分」に当たると説明されています。
もっとも、同じ欠損について外貌醜状としての評価も問題になり、耳介の欠損の等級だけで結論が決まるとは限りません。欠損の範囲や外観を確認し、各評価の関係を整理します。
また、両耳の聴力障害の扱いと、左右の耳介の欠損の扱いは同じではありません。「耳の障害だからすべて一緒に扱う」「傷あとと欠損を必ず別々に加算する」といった判断は避ける必要があります。
事故との関係と、生活・仕事への影響を整理する
事故前の聞こえと、受傷後の変化を比較する
難聴では、事故による損傷のほか、もともとの耳の病気、加齢、騒音にさらされる環境などの影響が問題になる場合があります。事故後に難聴が確認されたというだけで、現在の状態がすべて事故によるものと決まるわけではありません。
事故前の健康診断の聴力結果、耳鼻科への通院記録、補聴器の使用歴などは、比較の資料になります。以前から聞こえにくさがあった場合も、その事実だけで事故の影響が否定されるのではなく、事故によって何が変わったかを確認します。
事故直後の出血や鼓膜の所見、頭部のけが、耳の症状を訴えた時期、耳鼻科を受診するまでの経緯も整理します。別のけがの治療が優先された場合は、その事情を記録に沿って説明します。
会話や作業への支障を具体化する
聞こえにくさは、静かな部屋での一対一の会話だけでは把握しきれない場合があります。実際に困る場面を、診療記録や職場の資料と対応させて整理します。
電話やオンライン会議で聞き返す回数が増えた。
複数人の会話で、発言の内容を追いにくくなった。
呼びかけや警報に気付きにくく、作業方法を変更した。
耳鳴りが気になり、集中や休憩の取り方に変化が生じた。
接客・電話対応などの担当が変わり、職場の配慮を受けている。
以上は記録する項目の例です。実際に生じていない支障まで当てはめる必要はありません。症状が軽い場面や、補助的な工夫によってできていることも含めて、正確に伝えましょう。
生活・仕事の記録は医学的な検査を補足するものであり、検査に代わるものではありません。また、等級認定と将来の収入減少である逸失利益の評価は同じ判断ではなく、職種や収入への影響も別途確認します。
申請前や非該当となったときに確認したい資料
残った症状に対応する資料をそろえる
資料 | 主な確認点 |
|---|---|
初診からの診療録・紹介状 | 受傷状況、症状を訴えた時期、診断と治療経過 |
純音聴力検査の結果 | 左右の気導・骨導、周波数ごとの値、測定日、平均値の計算方法 |
語音聴力検査の結果 | 言葉の聞き取り、最高明瞭度などの評価 |
耳鳴りの検査結果 | ピッチ・マッチ、ラウドネス・バランス等の所見と医師の評価 |
必要に応じた補足検査・画像 | 原因となる損傷や、各検査結果の関係を説明する根拠 |
事故前の検査・通院資料 | 既存の難聴や耳の病気、事故後の変化 |
後遺障害診断書・生活や仕事の記録 | 症状固定時の状態、残存症状、具体的な支障 |
検査用紙に数値があることと、その数値の意味が十分に説明されていることは別です。診断書の記載、検査結果、本人が訴える症状の間に食い違いがある場合は、理由を確認します。
判断理由を確認してから、追加資料を検討する
非該当や想定と異なる等級になった場合は、聴力が基準に達していないとされたのか、耳鳴りの裏付けが不足したのか、事故との関係が認められなかったのかを分けて読みます。
例えば、難聴の等級に達していなくても、耳鳴りに関する所見や資料が検討されているかは別に確認する必要があります。一方、検査を追加すれば必ず認定されるものでもありません。
異議申立てや裁判を検討する際は、未提出の結果がないか、検査方法・回数に問題がないか、医師の説明を補う必要があるかを整理します。本人の訴えを繰り返すだけでなく、判断理由に対応する資料を検討することが大切です。
まとめ:聞こえ方と残った症状を、それぞれ裏付ける
交通事故後の耳の後遺障害では、難聴、耳鳴り、平衡機能の障害、耳介の欠損などを分けて確認します。難聴は左右の組合せや検査結果に基づき、耳鳴りは難聴との関係、持続性、検査による評価を含めて検討します。
事故前後の変化、複数回の検査、医師の所見、生活・仕事への影響を整理し、何が残存する障害として問題になるのかを明らかにしましょう。
本記事は一般的な情報を説明するもので、個別の診断、検査の必要性や等級認定を判断するものではありません。医療上の判断は担当医に、申請資料や損害賠償の対応は弁護士に相談してください。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。
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