この記事はこんな人におすすめ:
顔や首、腕・脚などに傷跡ややけどの跡が残った人
事故の治療でできた手術痕も後遺障害になるのか知りたい人
傷跡の等級認定や、仕事への影響をどう説明すればよいか悩んでいる人
交通事故で残った傷跡は、場所、種類、長さ・面積、人目につく程度などによって、後遺障害の評価が変わります。顔に残った線状の傷と、腕や脚に残った広い傷跡では、確認する基準が同じではありません。
また、傷跡について等級が認定されることと、将来の収入減少に対する逸失利益が認められることは、分けて検討する必要があります。本記事では、傷跡・外貌の後遺障害について、部位別の認定基準、写真や診断書の準備、賠償上の争点を整理します。
目次
傷跡・外貌の後遺障害で確認すること
顔・頭・首に残った傷跡の等級
腕・脚・胸・お腹・背中の傷跡
複数の傷跡と、痛み・機能障害がある場合
症状固定と傷跡の治療をどう考える?
診断書・写真・測定資料の準備
認定結果の見直しと慰謝料・逸失利益
まとめ:部位に合った基準と資料で傷跡を確認する
傷跡・外貌の後遺障害で確認すること
認定上の名称と、傷跡の種類
事故による切創、挫創、擦過傷、熱傷などの治療後に、傷跡や皮膚の変化が残ることがあります。後遺障害の認定では、外見に残った変化を「醜状障害」という区分で扱います。本記事でも基準の名称としてこの言葉を用いますが、本人の容姿や価値を評価する趣旨ではありません。
傷跡の説明では、次のような言葉が使われます。
用語 | 主な意味・確認事項 |
|---|---|
瘢痕(はんこん) | 傷が治った後に残った組織の変化。広さ、形、位置などを確認する |
線状痕(せんじょうこん) | 線のような形で残った傷跡。長さや人目につく程度を確認する |
組織陥没 | 組織が欠損し、くぼんでいる状態。範囲や位置などを確認する |
色の変化 | やけどの後の変色・白斑など。残存性や目立ち方、範囲を確認する |
傷跡があるというだけで、必ず認定されるわけではありません。治療後に何が残ったかを、該当する部位の基準と照合します。
事故の治療による手術痕も確認する
事故で直接できた傷だけでなく、事故によるけがを治療するための手術や処置で残った傷跡も、検討の対象になります。
たとえば骨折の手術痕や、腹部の手術痕については、事故とのつながり、残った位置・範囲、治療経過を確認します。ただし、手術を受けた事実や縫合した長さだけで等級が決まるものではありません。
事故直後の傷の大きさと、症状固定時に残る傷跡の大きさは区別します。申請で重要になるのは、治療後に残った状態です。
現行の外貌の等級は男女共通
外貌の障害について、現行の等級は男女共通です。古い裁判例や資料には性別で区別した等級が出てくることがありますが、その号数や基準を現在の事故にそのまま当てはめないよう注意が必要です。
一方、認定された等級に基づく賠償では、本人の仕事や生活への影響を個別に確認します。認定基準が共通であることと、全員の賠償額が同じになることは別の問題です。
顔・頭・首に残った傷跡の等級
「外貌」は顔だけを意味するものではない
外貌には、頭部・顔面部・頸部など、腕や脚以外の日常露出する部分が含まれます。顔、頭、首のどこに残った傷跡かによって、基準が異なります。
自賠責の外貌の障害には、次の区分があります。
等級 | 等級表上の区分 |
|---|---|
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
具体的には、原則として次の状態が問題になります。いずれも人目につく程度以上であることが必要です。
部位 | 7級12号を検討する主な基準 | 12級14号を検討する主な基準 |
|---|---|---|
頭部 | 手のひら大以上の瘢痕、または同程度以上の頭蓋骨の欠損 | 鶏卵大面以上の瘢痕、または同程度以上の頭蓋骨の欠損 |
顔面部 | 鶏卵大面以上の瘢痕、または10円銅貨大以上の組織陥没 | 10円銅貨大以上の瘢痕、または長さ3cm以上の線状痕 |
頸部 | 手のひら大以上の瘢痕 | 鶏卵大面以上の瘢痕 |
手のひら大には指の部分を含みません。鶏卵大面は、卵程度の大きさの面を指す認定上の表現です。自己測定だけで結論を出さず、実際の範囲を医療機関や認定手続で確認します。
顔の線状痕は、長さ3cm・5cmが一つの区切りになる
顔面部の線状痕では、長さ3cm以上なら12級14号、長さ5cm以上なら9級16号の基準が問題になります。
ただし、単に物差しでその長さが測れるだけではなく、人目につく程度以上かどうかを確認します。また、これは顔面部の線状痕の基準です。首や腕、お腹の線状の傷に、同じ3cm・5cmの基準をそのまま用いることはできません。
傷が曲がっている場合には、両端を直線で結んだ距離と、傷の形に沿った長さが異なることがあります。指定書籍でも測り方が争われた裁判例が紹介されています。どのように測った数値かを明らかにすることが重要です。
髪や眉毛で隠れる部分にも注意する
頭髪や眉毛などに隠れる部分は、外貌の傷跡として扱わないという基準があります。傷全体の長さと、外から確認できる部分の長さが一致しない場合には、評価が変わる可能性があります。
一方、写真の照明や角度によって見え方が変わることもあるため、一枚の写真だけで判断しにくい場合があります。自賠責の認定では、面接によって実際の状態を確認することがあります。
化粧や撮影条件で傷跡が分かりにくくなる場合も、実際の状態を確認できるよう、医療機関や手続担当者に撮影方法を相談します。
腕・脚・胸・お腹・背中の傷跡
腕・脚では、手のひら大の傷跡が基準になる
自賠責では、上肢の露出面に手のひら大の傷跡が残った場合は14級4号、下肢の露出面では14級5号が問題になります。
指定書籍が整理する自賠責の取扱いでは、上肢の露出面は肩関節以下の上腕から指まで、下肢の露出面は股関節以下の大腿から足の甲までです。
自賠責と労災では、露出面として扱う範囲に違いがあります。労災の説明にある「肘から先」「膝から先」という範囲だけを見て、上腕や太ももの傷跡は対象外と判断しないことが大切です。
広範囲で特に著しい傷跡は12級相当の検討もある
上肢や下肢に手のひら大の3倍程度以上の瘢痕が残り、特に著しい状態と判断される場合には、12級相当を検討する取扱いがあります。
これは、面積だけで機械的に確定するという意味ではありません。傷跡の範囲・状態を確認し、等級表に直接定められた障害に準じて評価する「相当等級」として検討します。
傷跡が関節付近にあり、皮膚のつっぱりや動かしにくさも残る場合には、見た目だけでなく機能への影響も医師に伝えます。
胸・腹部、背中・臀部にも基準がある
日常露出しない部位だからといって、傷跡の評価がすべて対象外になるわけではありません。
指定書籍では、自賠責の取扱いとして、胸部・腹部のまとまり、または背部・臀部のまとまりについて、その全面積の4分の1程度以上に瘢痕が残る場合は14級相当、2分の1以上に残る場合は12級相当と整理されています。
この区分では、傷跡の「長さ」だけでなく、所定の部位全体に対する「面積」が問題になります。たとえば、お腹に長い一本の手術痕がある場合でも、それだけで面積の基準を満たすとは限りません。
ここでも労災と自賠責の扱いを混同せず、評価対象となる範囲を確認する必要があります。
複数の傷跡と、痛み・機能障害がある場合
離れた傷の長さを無条件に足すことはできない
顔に複数の線状痕がある場合、すべての長さを足して3cmや5cmになるかを確認するだけでは足りません。
外貌の傷跡では、二つ以上の瘢痕や線状痕が隣接している、または合わせて一つの傷跡と同程度以上の外見上の変化を示している場合に、面積や長さの合算を検討します。
傷と傷の距離、位置関係、形、全体としての見え方が重要です。指定書籍には、複数の傷があっても、一つの傷跡として見ることができず、合算が認められなかった例も紹介されています。
腕・脚の複数の傷跡も部位ごとの扱いを確認する
上肢・下肢の傷跡についても、複数の瘢痕がある場合の取扱いがあります。ただし、指定書籍が整理する自賠責の扱いでは、少なくとも手のひら大以上の傷跡に該当する程度のものが一つ以上残ることなどが問題になります。
小さな傷跡が多数あれば、必ず合計面積だけで認定されるわけではありません。外貌の合算ルールと同じ説明で処理せず、それぞれの部位に合った条件を確認します。
見た目の変化と機能への影響を分ける
傷跡の周囲に痛みや感覚の変化がある場合や、皮膚のつっぱりによって動作に支障が出る場合には、その原因と残存状態も確認します。
ただし、傷跡の等級と、痛み・機能障害の等級を必ず別々に認定して併合するわけではありません。同じ障害を二つの面から評価していないか、独立した機能障害があるかを整理します。
たとえば眼瞼・耳介・鼻の欠損については、欠損障害の等級と外貌の等級のうち、上位を採用する取扱いがあります。一方、異なる障害が併存する場合には別の扱いになるため、単純に症状の数で等級を加算しないことが重要です。
症状固定と傷跡の治療をどう考える?
治療経過と、今後の改善の見込みを確認する
事故直後の傷と、治療後の傷跡では、大きさ・色・盛り上がりなどが変わることがあります。後遺障害の申請では、主治医に治療経過と残存状態を確認し、症状固定の時期を検討します。
「事故から一定期間が経ったから必ず固定」という一律の判断は避けます。今後の治療計画、期待できる変化、現在残っている傷跡を整理する必要があります。
やけど後の変色や色素脱失による白斑なども、永久的に残ると認められ、人目につく程度や範囲の基準を満たす場合には、評価を検討します。色が違う部分があればすべて等級の対象になるわけではありません。
手術やレーザー治療を受けないだけで否定されるとは限らない
傷跡の修正手術やレーザー治療が検討される場合、改善の見込みだけでなく、治療の負担やリスクも関係します。
指定書籍では、治療による改善可能性が争われた例を取り上げ、一定の侵襲を伴う治療を受けないことだけで後遺障害の存在を否定することには慎重な検討が必要とされています。
認定のために治療を断る、あるいは治療を受けるよう無理をするのではなく、医学的な説明を受けて判断することが大切です。勧められた治療の内容、期待される効果、リスク、治療方針を診療記録で確認できるようにします。
診断書・写真・測定資料の準備
写真と診断書で、同じ傷跡を確認できるようにする
傷跡の申請では、どの部位に、どの種類の傷跡が、どれだけ残っているかが分かる資料をそろえます。
資料 | 主に確認する内容 |
|---|---|
後遺障害診断書 | 傷跡の部位、種類、長さ・面積、残存状態 |
外観写真 | 傷跡の位置、形、色、くぼみ、周囲との関係 |
測定記録・図 | 測定方法、範囲、複数の傷跡の位置関係 |
事故直後からの診療記録 | 原因となる傷害、事故との関係、治療経過 |
手術・処置の記録 | 事故の治療による手術痕か、今後の治療計画 |
生活・仕事の資料 | 対人業務などへの影響、実際に生じた変更や制限 |
顔や体の全体像が分かる写真と、傷跡の状態が分かる写真は役割が異なります。接写だけではどこにある傷か分かりにくく、遠くからの写真だけでは細部が確認できないことがあります。
撮影条件で印象を変えない
写真には、加工や美肌補正などを加えず、実際の状態が分かるものを用います。撮影日、方向、距離、照明などを整理し、経過を比較するときは条件の違いにも注意します。
大きさを示すための尺度を写す場合も、傷と離れた位置に置くと比較しにくくなります。医療機関での撮影や測定、申請先が求める資料の形式を確認するとよいでしょう。
無理に傷跡を強調したり、逆に隠したりするのではなく、診断書の記載と写真が対応していることが重要です。面接の案内がある場合は、その方法に従って残存状態を確認してもらいます。
測定値の違いは方法から確認する
自己測定と医師の測定、過去の記録と現在の記録で数値が違うことがあります。測る場所、曲線に沿うかどうか、傷跡として扱う範囲などの違いを確認します。
認定基準の長さや面積に近い場合には、小さな違いでも評価に関係する可能性があります。ただし、都合のよい数値を選ぶのではなく、測定の根拠を明確にすることが大切です。
認定結果の見直しと慰謝料・逸失利益
非該当の理由によって追加すべき資料は異なる
等級に該当しなかった場合には、長さや面積が足りないのか、人目につく程度が確認されなかったのか、複数の傷の合算が認められなかったのかなどを確認します。
写真が不鮮明だった場合と、実際の範囲が基準に達していない場合とでは、検討すべき対応が異なります。異議申立てでは、認定理由と資料を照合し、どの判断について再検討を求めるのかを具体化します。
また、自賠責で非該当だったからといって、傷跡による精神的苦痛について民事上の賠償の検討がすべて終わるとは限りません。指定書籍にも、等級基準に達しない傷跡について慰謝料を認めた裁判例が紹介されています。ただし、追加の慰謝料が必ず認められるという意味ではありません。
慰謝料と逸失利益を区別する
後遺障害慰謝料は、残った障害による精神的苦痛に対する賠償です。一方、逸失利益は、働く能力が低下し、将来得られたはずの収入を失うことに対する賠償です。
傷跡については、見た目の変化があること自体は確認できても、仕事や収入へどう影響するかが争われることがあります。
等級が認定されたから逸失利益が一定割合で必ず認められるわけではなく、傷跡だから仕事への影響がないと一律に決まるわけでもありません。具体的な業務と、現実に生じている制限を確認する必要があります。
仕事への影響は、業務内容と変化を示す
接客、営業、撮影、人前で説明する仕事などでは、傷跡が業務にどう影響しているかが問題になることがあります。ただし、そのような職種であることだけで結論は決まりません。
担当業務が変わった、対人業務から外れた、採用や配置に影響があった、収入を維持するために特別な負担をしているなど、具体的な事実を確認します。勤務資料、収入資料、会社とのやり取りなどが説明に役立つ場合があります。
将来の就労への影響を主張する場合も、可能性だけを抽象的に述べるのではなく、傷跡の状態、本人の職業や進路、現実の状況を踏まえて検討します。本人の精神的苦痛と、収入への影響を混同しないことが重要です。
まとめ:部位に合った基準と資料で傷跡を確認する
交通事故で残った傷跡は、顔・頭・首、腕・脚、胸腹部・背部などの部位によって基準が異なります。長さや面積だけでなく、人目につく程度、複数の傷の位置関係、治療後の残存状態も確認します。
申請に向けては、診断書・写真・測定記録を対応させ、事故や手術とのつながりを整理します。痛みや動作の制限がある場合は、見た目の変化と機能への影響を分けて伝えます。
認定や賠償の説明に疑問がある場合は、認定理由と医療資料、仕事への影響を示す資料を用意し、交通事故を扱う弁護士に相談すると、検討すべき点を整理できます。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。
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