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交通事故で肩・肘・手首が動かしにくいときは?後遺障害等級と必要な資料

後遺障害

2026/10/07

交通事故で肩・肘・手首が動かしにくいときは?後遺障害等級と必要な資料

あきらB

#部位・症状別

この記事はこんな人におすすめ:

  • 骨折や脱臼の治療後も、腕が上がらない、肘が伸びない、手首が曲がらない人

  • 肩や手首の痛み・しびれが続き、後遺障害の対象になるか知りたい人

  • 関節の角度を測ったのに非該当となり、何を確認すべきか分からない人

肩・肘・手首の後遺障害では、関節がどの程度動くかに加え、動きを妨げている原因と測定方法を確認します。「骨折した」「手術を受けた」という事実だけで等級が決まるものではありません。

また、関節の動きの制限が等級の基準に達していなくても、痛みやしびれが神経症状として検討される場合があります。本記事では、肩・肘・手首に残る障害の考え方と、申請に向けて整理したい資料を説明します。

目次

  • 肩・肘・手首は「上肢の3大関節」として評価される

  • 関節の動きの制限と、後遺障害等級の基本

  • 可動域は、測定方法と比較対象を確認する

  • 肩・肘・手首ごとに確認したいポイント

  • 痛み・しびれや関節の不安定さが残った場合

  • 診断書と一緒に整理したい資料

  • 非該当への対応と、仕事への影響の伝え方

  • まとめ:角度・原因・経過を対応させて確認する

肩・肘・手首は「上肢の3大関節」として評価される

同じ腕の症状でも、障害の種類を分ける

上肢とは腕から手にかけての部分です。そのうち肩関節、肘関節、手関節が「3大関節」に当たります。手関節は、一般にいう手首の関節です。

関節の動きが制限される状態を、後遺障害の評価では機能障害として検討します。ただし、腕に残る障害には、痛み・しびれ、骨の変形、手指の障害などもあります。

残った状態

主な確認事項

腕が上がらない、肘や手首が十分に曲がらない

関節の可動域、制限の原因、測定方法

関節がぐらつく、外れやすい

不安定性の原因、脱臼の経過、補装具の必要性

痛み・しびれが続く

症状の部位、医学的所見、事故からの経過

骨の形が変わっている

骨の損傷部位、癒合の状態、機能障害との関係

指が動かない、物をつまみにくい

手指の関節、腱・神経等の状態

症状をまとめて「腕が使いにくい」とするより、どの部位に、どの障害が残ったかを分けることが大切です。複数の障害があっても、その等級を単純に足し合わせるわけではありません。

本記事は肩・肘・手首の機能障害を中心に扱います。手指そのものの障害や、鎖骨・肩甲骨などの変形は、それぞれの評価も確認します。

治療中の動きにくさと、残存する障害を区別する

ギプスを外した直後は関節が動かしにくくても、治療やリハビリテーションにより改善する場合があります。後遺障害では、必要な治療を経た後に残る状態を評価します。

骨折部を固定する金属などが動きの制限の原因になっている場合には、除去の予定や、その後の回復見込みも関係します。一方、金属が残っているという理由だけで、必ず除去まで認定を待つということではありません。

症状固定の時期は一律の月数で決めず、治療内容、回復の見込み、担当医の判断を踏まえて検討します。

関節の動きの制限と、後遺障害等級の基本

1つの関節に障害が残った場合

関節が動く範囲を「可動域」といいます。自賠責の等級では、1つの肩・肘・手首の関節について、主に次の区分があります。

等級

障害の区分

評価の基本

8級6号

1関節の用を廃したもの

関節の強直、完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態など

10級10号

1関節の機能に著しい障害を残すもの

原則として可動域が健側の2分の1以下に制限される状態など

12級6号

1関節の機能に障害を残すもの

原則として可動域が健側の4分の3以下に制限される状態

健側とは、比較対象となる障害のない側です。右手首に障害があれば、原則として左手首と比較します。上位の等級に該当する場合は、その上位等級で評価されます。

「4分の3以下」は、動く範囲が元の25%以下になるという意味ではありません。比較対象の可動域を100とすると、残る可動域が75以下になるという意味です。ただし、計算結果だけで認定されるのではなく、対象となる運動、測定方法、事故による損傷との対応が必要です。

この表は1関節の基本的な区分です。複数の関節や両腕に障害がある場合など、すべての組合せを示したものではありません。

「用を廃した」は、少し動かしにくい状態とは異なる

強直とは、関節が動かない、又はそれに近い状態です。基準上は、健側の可動域の10%程度以下に制限された場合などが問題になります。

日常生活で「ほとんど使えない」と感じていても、それだけで8級6号になるわけではありません。痛みのため使うことを控えている場合、関節自体が固まっている場合、神経の麻痺で自力では動かせない場合を区別して確認します。

人工関節・人工骨頭には別の取扱いがある

人工関節や人工骨頭を入れた関節では、可動域が健側の2分の1以下に制限されている場合は8級、そこまで制限されていない場合は10級となる取扱いがあります。

骨折を固定するプレートやスクリューと、人工関節・人工骨頭への置換は別のものです。「金属が入っている」という説明だけでは判断できないため、手術記録や画像で処置の内容を確認します。

可動域は、測定方法と比較対象を確認する

自分で動かす角度と、他人の力で動かす角度

可動域の測定には、本人が自分の力で動かす「自動運動」と、検査者が外から力を加えて動かす「他動運動」があります。

関節機能障害の評価は、原則として他動運動による測定値を用います。ただし、神経の麻痺や腱の断裂など、他動値だけで評価することが適切でない場合には、自動値が問題になることがあります。

例えば、他人が支えれば腕は上がるのに、自分の力では上げられない場合には、その違いの原因を明らかにする必要があります。本人に有利な数値を選ぶのではなく、障害の性質に合った測定・評価になっているかを確認します。

強い痛みがある場合も、診察時にそのまま伝えます。認定を意識して無理に動かしたり、意図的に動きを抑えたりすることは適切ではありません。

左右の比較が適切かを見る

通常は左右を比較しますが、反対側にも以前のけがや今回の事故による障害があると、比較対象として適切でない場合があります。その際は、参考可動域角度を用いるなどの検討が必要です。

事故前から肩が上がりにくかった、反対の手首を過去に骨折していた、といった事情も担当医に伝えます。左右差が小さいことだけで、両側とも正常だと判断できるわけではありません。

関節ごとの主要な運動を確認する

関節には複数の動く方向があり、評価では「主要運動」を中心に確認します。同じ面の屈曲・伸展は、原則として両方向の可動域を合計して評価します。

例えば、手首を手のひら側に曲げる方向だけを見て、反対方向の動きを省いたまま等級を判断することはできません。また、肩では前方へ上げる動き、横へ上げる動きなど、複数の方向を確認します。

主要運動の数値が基準をわずかに上回る場合には、参考運動の制限も考慮する取扱いがあります。境界に近い数値だけを見て自己判断せず、測定項目全体と適用基準を確認することが大切です。

肩・肘・手首ごとに確認したいポイント

肩:腕を上げにくい原因と、事故前後の違い

肩では、上腕骨近位部骨折、肩関節の脱臼、腱板損傷などの後に、腕を上げにくい状態が残ることがあります。腱板は、肩の動きに関係する腱の集まりです。

確認したいのは、骨や腱などの損傷があるか、その損傷が動きの制限を説明するか、事故によって生じたものかという点です。画像で異常が分かっても、事故前からの変化なのかが争われることがあります。

事故前は頭の上の物を取れていたか、着替えに支障はなかったか、過去の肩の治療歴がないかなどを、事故後の診療記録と対応させて整理します。「事故前に症状がなかった」という本人の説明だけで結論づけず、受傷状況や画像、治療経過も確認します。

肘:曲げる動きと伸ばす動きを確認する

肘周囲の骨折や脱臼の後には、肘が十分に曲がらない、伸び切らないなどの制限が残ることがあります。

生活への影響は、顔に手を近づける、髪を整える、物を遠くへ置くなど、具体的な動作で説明すると整理しやすくなります。ただし、生活動作の不便さそのものを、そのまま可動域の数値に置き換えることはできません。

小指側のしびれなどを伴う場合には、関節の制限だけでなく神経の障害についても、症状と所見を分けて確認します。

手首:曲げ伸ばしと、前腕をひねる動きを分ける

手首では、橈骨遠位端骨折などの後に、曲げ伸ばしの制限や痛みが残ることがあります。骨折部の癒合状態、関節面の状態、周囲の組織の損傷などが確認事項になります。

また、手のひらを上や下へ向ける動きは、前腕の回外・回内という運動です。手首の曲げ伸ばしとは別に確認すべきもので、一定の制限が残る場合には、関節の機能障害に準じた評価が問題になります。

「手首が動かない」という訴えの中に、曲げ伸ばしと前腕をひねる動きの両方が含まれていないかを整理します。握力の低下だけで関節の等級が決まるわけではなく、腱や神経、手指の状態も関係します。

痛み・しびれや関節の不安定さが残った場合

関節の制限と、神経症状の評価を区別する

関節機能障害では、原則として、動きを制限する原因となる器質的な損傷を確認します。器質的な損傷とは、骨、腱、神経などの組織に生じた損傷や変化です。

痛みのために動かしにくい場合、角度だけを見ると制限があっても、関節機能障害として認定されるとは限りません。その一方で、痛み・しびれについて、12級13号や14級9号の神経症状として評価される可能性があります。

これは、関節の等級が付かなければ自動的に神経症状の等級が付くという意味ではありません。症状を裏付ける医学的所見、事故との関係、継続性などを別途確認します。

強い痛み、腫れ、皮膚の変化、関節の拘縮などがみられる場合には、CRPSなどの評価が問題になることもあります。単に「痛みが強い」という理由だけで特定の診断や等級を決めず、担当医の評価を確認します。

ぐらつきや脱臼の繰り返しは、動揺関節として検討する

動揺関節とは、関節の安定性が損なわれ、通常より大きく動いたり、異常な方向に動いたりする状態です。動く範囲が狭くなる障害とは異なります。

書籍では、上肢の動揺関節について、常に硬性補装具が必要な場合は10級相当、時々必要な場合や習慣性脱臼は12級相当という取扱いが説明されています。

ただし、市販のサポーターを使っているだけで、この基準を満たすわけではありません。靱帯などの損傷、不安定性の程度、医療上の補装具の必要性を確認します。事故で一度脱臼したというだけで、習慣性脱臼に当たるわけでもありません。

同じ原因による障害を重複して数えない

機能障害と、その障害に通常伴う痛みがある場合などは、別々の等級を機械的に併合するのではなく、派生関係を検討します。

肩と肘の両方に障害がある場合や、同じ腕に手指の障害もある場合も、障害の系列や組合せに応じた判断が必要です。診断名や症状の数だけ等級が上がると考えず、それぞれの原因と関係を整理します。

診断書と一緒に整理したい資料

「角度の数字」と「その数字になる理由」をそろえる

後遺障害診断書に角度が記載されていても、その測定方法や損傷との対応が不明だと、評価が難しくなる場合があります。

資料

主な確認点

事故直後の診療録・紹介状

受傷部位、当初の症状、事故から受診までの経過

X線・CT・MRI等の画像と読影所見

骨折、癒合状態、腱・靱帯等の損傷、症状との対応

手術記録・退院時の記録

処置の内容、固定材料、人工関節等の有無

リハビリテーションの記録

可動域の推移、改善・悪化の経過、生活動作の変化

可動域の測定記録

左右、自動・他動、測定方向、測定日・条件

神経症状・筋力等の検査記録

しびれの範囲、麻痺や筋力低下、医学的所見

後遺障害診断書

症状固定時の状態、原因となる所見、他の資料との整合性

生活・仕事の記録

できない動作、時間の増加、援助や業務変更

検査は、症状や損傷に応じて担当医が必要性を判断するものです。すべての検査を受ければ認定されるということではありません。

測定値が変わったときは、その理由を確認する

可動域が時期や医療機関によって違う場合には、どちらかの数値が直ちに誤りというわけではありません。治療による改善、症状の変化、自動・他動の違い、測定前の処置などを確認します。

書籍でも、測定方法の適切さと、損傷の内容に照らした数値の信頼性が区別して論じられています。過去に改善した後で大きく悪化した場合などは、その経過を担当医に説明してもらうことが重要です。

数値の違いを隠したり、有利な結果だけを取り出したりせず、経過全体を説明できる資料を整理します。

非該当への対応と、仕事への影響の伝え方

非該当の理由によって、補う資料は異なる

認定結果が想定と違ったときは、まず判断理由を確認します。

  • 可動域が基準に達していないとされたのか

  • 測定方法や比較対象に問題があるとされたのか

  • 動きの制限を説明する損傷が確認できないとされたのか

  • 事故との因果関係や、症状の継続が認められなかったのか

例えば、他動値が不足している場合と、腱板損傷が事故前からあったと判断された場合では、検討する資料が異なります。異議申立て等では、同じ訴えを繰り返すだけでなく、どの判断に対し、どの記録や医学的説明を補えるかを考えます。

自賠責の判断と裁判所の評価が異なる場合もありますが、訴訟にすれば必ず上位等級になるわけではありません。基準にわずかに届かない場合の裁判例も、個別の事情を離れて一般化することはできません。

等級と、仕事・収入への影響は分けて整理する

後遺障害の等級は損害賠償の重要な資料ですが、それだけで逸失利益の額が自動的に確定するわけではありません。職種、具体的な業務、支障の程度、収入への影響などを確認します。

場面

記録の例

高い場所での作業

腕を上げ続けられない時間、代替した作業、同僚の補助

荷物の運搬

扱える重さや回数の変化、持ち方の変更、担当変更

パソコンや工具の操作

継続できる時間、休憩の増加、作業速度や方法の変化

家事・育児

洗濯物を干す、調理する、子どもを抱く際の支障と援助

これらは記録方法の例です。実際にできること、改善したことも含め、事実に沿って整理します。利き手かどうかは具体的な支障を説明する事情になりますが、それだけで関節の等級が自動的に変わるものではありません。

まとめ:角度・原因・経過を対応させて確認する

肩・肘・手首の後遺障害は、残った可動域だけでなく、その制限を説明する損傷、測定方法、事故からの経過を合わせて確認します。骨折や手術の診断名だけで等級を決めることはできません。

関節の制限、痛み・しびれ、不安定性を分け、診断書、画像、リハビリテーションの記録、生活や仕事への影響を対応させることが大切です。非該当の場合も、判断理由に応じて不足する資料を検討しましょう。

本記事は一般的な情報を説明するもので、個別の診断、治療方針や等級認定を判断するものではありません。医療上の判断は担当医に確認し、申請や賠償の進め方は具体的な資料に基づいて検討してください。

この記事の執筆者

あきらB

交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。

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