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交通事故で高次脳機能障害が残ったら?記憶・注意・行動の変化と認定のポイント

後遺障害

2026/10/07

交通事故で高次脳機能障害が残ったら?記憶・注意・行動の変化と認定のポイント

あきらB

#部位・症状別

この記事はこんな人におすすめ:

  • 交通事故後、本人や家族の物忘れ、集中力の低下、怒りやすさなどが気になっている人

  • 脳挫傷やびまん性軸索損傷などの治療後、仕事や日常生活に支障が残っている人

  • 高次脳機能障害の後遺障害等級や、認定のために準備する資料を知りたい人

交通事故で脳に損傷を受けると、記憶や注意、物事を計画して進める力、感情や行動の調整などに障害が残ることがあります。高次脳機能障害は、外見や短い会話だけでは分かりにくく、本人も変化を十分に自覚していない場合があります。後遺障害の認定では、画像や検査結果とともに、事故前後の生活・仕事の変化を具体的に示すことが重要です。

目次

  • 交通事故による高次脳機能障害とは

  • 認定では「事故による脳損傷」と「残った支障」を確認する

  • 高次脳機能障害で問題になる後遺障害等級

  • CT・MRIと神経心理学的検査で確認すること

  • 家族の報告書は、事故前後の具体的な変化を記載する

  • 復職できた場合も、支援の内容と仕事の変化を整理する

  • 認定に向けてそろえたい資料と、結果に疑問がある場合の対応

  • まとめ:医療記録と生活の記録をつなげて、障害の実態を伝える

交通事故による高次脳機能障害とは

記憶だけでなく、段取りや対人関係にも影響する

高次脳機能障害という言葉は、脳の働きのうち、記憶、注意、判断などの複雑な機能に生じる障害を指して使われます。本記事では、交通事故による脳の損傷を原因とする高次脳機能障害を中心に説明します。

関連する診断名には、脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷などがあります。ただし、診断名から、残る症状や後遺障害等級が一律に決まるわけではありません。

障害の現れ方

日常生活や仕事で気づく変化の例

記憶・記銘の障害

約束や直前の説明を忘れる、新しい仕事の手順を覚えにくい

注意・集中の障害

周囲の音で作業が途切れる、確認漏れが増える

遂行機能の障害

作業の順序を組み立てられない、予定変更に対応しにくい

感情・行動の調整の障害

怒りを抑えにくい、状況に合った言動を取りにくい

自発性の低下

声をかけられるまで行動を始められない

これらは変化に気づくための例であり、いくつ当てはまるかで診断できるチェックリストではありません。別の病気や心身の状態による影響もあるため、気になる変化があれば、その経過を主治医に伝えることが出発点です。

「話せる」「歩ける」だけでは分からない障害がある

手足を動かせる、家族と会話できる、慣れた買い物ができるといった状態でも、複雑な作業や対人関係に支障が残ることがあります。

例えば、短い会話は成立していても、翌日には内容を忘れている場合があります。また、決まった作業はできても、指示が変わると対応できなくなることもあります。

一場面で「できたこと」だけでなく、継続できるか、別の場面でもできるか、周囲の助けが必要かを確認しましょう。本人が困りごとを言葉にしにくい場合には、家族や職場が把握している事実も重要な情報になります。

認定では「事故による脳損傷」と「残った支障」を確認する

事故と脳の損傷・症状との関係を整理する

後遺障害の認定では、まず、事故による脳の損傷があり、現在の症状がそれによって生じたものかを確認します。そのうえで、残った障害の内容や程度を検討します。

頭を打った事実や、事故後に物忘れが増えたという訴えだけで、脳外傷による高次脳機能障害と決まるわけではありません。事故の状況、意識障害、画像、症状の出現時期と経過などを照合します。

一方、本人が当時の状況を覚えていないこともあります。本人の記憶だけに頼らず、救急搬送時や入院中の診療記録を確認することが大切です。

事故直後の意識障害と、その後の経過が重要になる

事故直後に意識を失っていたか、呼びかけにどう反応していたか、ぼんやりした状態がどの程度続いたかは、脳損傷を検討するうえで重要な情報です。医療記録には、JCSやGCSという尺度で意識状態が記録されている場合もあります。

ただし、意識障害の時間だけを取り出して、認定の可否を一律に判断するものではありません。自賠責の実務で、詳しく調査する事案を選ぶための目安と、最終的な認定基準は区別する必要があります。

指定書籍でも、意識障害だけでなく、画像所見や症状の推移などを踏まえた検討の必要性が説明されています。

症状が始まった時期と、周囲が気づいた時期を分ける

入院中は家族や医療者の支援が多く、退院して家事や仕事を再開してから、初めて支障が目立つことがあります。この場合、「退院後に気づいた」というだけで、その時点から症状が発生したとは限りません。

反対に、事故後にいったん支障なく生活していたのに、かなり時間がたってから別の症状が現れた場合などは、他の原因も含めて慎重な検討が必要です。

いつ気づいたかに加え、それ以前に似た変化がなかったかを、記録に沿って整理しましょう。事故との関係を強めるために発症時期を推測で早めたり、分からない部分を埋めたりする必要はありません。

高次脳機能障害で問題になる後遺障害等級

介護の必要性と、働く能力への影響を確認する

脳外傷による高次脳機能障害では、介護の必要性や、労働にどの程度の制限があるかに応じて等級が検討されます。自賠責で主に問題になる区分は、次のとおりです。

等級

評価の中心となる状態の概要

別表第一・1級1号

神経系統の機能または精神に著しい障害があり、常に介護が必要

別表第一・2級1号

神経系統の機能または精神に著しい障害があり、随時介護が必要

別表第二・3級3号

著しい障害があり、生涯にわたり労務に服することができない

別表第二・5級2号

著しい障害があり、特に軽易な労務にしか服することができない

別表第二・7級4号

障害があり、軽易な労務にしか服することができない

別表第二・9級10号

障害により、従事できる労務が相当程度制限される

この表は等級の位置づけを理解するための要約です。診断名や検査の点数を、そのまま表に当てはめて等級を確定することはできません。

指定書籍では、脳損傷の痕跡が画像で確認できるものの、具体的な労働能力の制限が認められないような場合の12級についても説明されています。上の表はすべての認定可能性を列挙したものではありません。

四つの能力と、生活全体の状況を確認する

障害の内容を把握する際には、意思疎通能力、問題解決能力、作業を続ける力、社会的な行動を取る能力という観点が参考になります。

例えば、説明を理解できるか、予定外の出来事に対応できるか、必要な時間働き続けられるか、周囲と協力できるかを確認します。これらの能力には個人差があり、一つの能力だけが大きく低下している場合もあります。

子どもや就労していない人についても、「働いていないから評価できない」と考えるのではなく、学習、集団生活、日常生活への影響を踏まえた検討が必要です。

声かけや見守りの必要性も具体的に伝える

介護の必要性を考える際は、食事や移動を身体的に手伝っているかだけでなく、声かけや安全のための見守りが必要かも確認します。

自分で体を動かせても、必要な行動を始められない、危険に気づきにくいなどの理由で支援が必要な場合があります。誰が、どの場面で、どのような支援をしているかを記録しましょう。

ただし、家族が心配して見守っているという事実だけで、直ちに介護を要する等級になるわけではありません。障害のためにどの支援が必要なのかを、医学的な所見とともに検討します。

CT・MRIと神経心理学的検査で確認すること

画像は撮影時期と、経過による変化を確認する

CTやMRIは、脳の損傷を確認するための重要な資料です。事故直後の画像と、その後の画像では、確認できる所見が異なることがあります。

そのため、直近の画像だけで判断せず、受傷時からの画像を時系列で確認します。脳挫傷や出血の所見がどう変化したかなどについて、医師の説明と照合します。

画像に明らかな異常がないという理由だけで、本人や家族が問題を打ち切る必要はありません。ただし、画像所見が乏しい事案では、事故による脳損傷と残存症状との関係が難しい争点になります。意識障害、症状の推移、検査結果などを合わせた検討が必要です。

検査の総合点だけで障害の有無を決めない

神経心理学的検査は、記憶、注意、知的機能、言語などを評価し、障害の内容や程度を把握するための資料になります。

指定書籍では、知能指数が正常範囲でも高次脳機能障害が残る場合があることや、検査だけでは十分に捉えにくい情動面の問題があることが説明されています。

「点数が正常だから生活上の問題もない」「点数が低いから特定の等級になる」とは限りません。検査の項目ごとの結果と、実際の生活で生じている支障がどのようにつながるかを確認します。

検査の選択や実施時期は医療者が判断します。等級認定のために特定の検査を一律に求めるのではなく、今ある支障を伝え、その評価に必要な検査について相談しましょう。

家族の報告書は、事故前後の具体的な変化を記載する

「物忘れがひどい」から、一つの場面に落とし込む

主治医が診察室で把握できる状態と、自宅や職場での状態が異なることがあります。家族の報告書は、診療場面だけでは伝わりにくい生活の実態を補う資料です。

抽象的な説明

具体化するときに確認すること

物忘れが増えた

何を忘れたか、どの程度の頻度か、予定の管理を誰がしているか

怒りっぽくなった

どの場面で何が起きたか、事故前との差、周囲の対応

家事ができなくなった

どの工程で止まるか、声かけや確認があればできるか

一人では心配

実際に起きた出来事、必要な見守りの内容と時間帯

報告書では、実際の出来事と家族の推測を分けます。「毎回」「全くできない」といった表現は、そのとおりの事実がある場合に使い、できることや支援があればできることも記載します。

事故前の生活と、今の支援の内容を示す

同じような失敗でも、事故前からあったのか、事故後に頻度や程度が変わったのかによって意味が異なります。以前の家事分担、仕事、金銭管理、対人関係などを、無理のない範囲で比較しましょう。

家族が日常的に手伝っているために、表面上は問題なく生活できている場合もあります。予定の連絡、持ち物の確認、服薬の声かけなど、普段の支援を省略せず記録することが大切です。

指定書籍でも、報告書の選択肢に印を付けるだけでなく、個別の具体的な出来事を交えて説明する重要性が指摘されています。

医師と家族の評価が違うときは、場面の違いを確認する

医師の意見書と家族の報告内容が異なっていても、どちらかを一方的に否定するのではなく、観察した場面や時期、利用していた支援の違いを確認します。

家族が把握している出来事を主治医に伝え、医療記録やリハビリテーションの評価と照合しましょう。職場の同僚や学校の教員が把握している変化も、家庭では分からない支障を補う場合があります。

復職できた場合も、支援の内容と仕事の変化を整理する

復職したという事実だけで、元の能力に戻ったとは限らない

職場に戻れていても、業務を限定してもらっている、確認作業を同僚が補っている、勤務時間を短縮しているなどの事情がある場合があります。

仕事上の支障は、出勤の有無に加え、以前と同じ仕事を、同じ正確さや速さで続けられるかという観点から整理します。慣れた単純作業ができても、新しい作業や対人対応に困難が残ることもあります。

反対に、休職中であることだけで、働く能力のすべてを失ったと判断することもできません。現在の能力、実際の支障、必要な支援を具体的に把握することが重要です。

仕事への影響を示す資料を残す

担当業務の変更、ミスの内容や頻度、追加された確認体制、勤務時間、収入の変化などを整理します。本人の説明だけで伝わりにくい場合には、勤務先が把握している事実を資料にまとめられるか相談しましょう。

こうした資料は、障害の程度を検討する際だけでなく、将来の収入への影響である逸失利益を考える際にも役立ちます。賠償額は等級名だけでは決まらないため、収入や就労状況の資料も分けて準備します。

認定に向けてそろえたい資料と、結果に疑問がある場合の対応

医療・生活・仕事の資料を時系列で整理する

資料を集める際には、何を説明するためのものかを意識すると、不足が分かりやすくなります。

  • 事故直後の診療記録や意識状態の記録:受傷時の状態を確認する

  • CT・MRIなどの画像と所見:脳損傷の有無や経過を確認する

  • 経過診断書・後遺障害診断書・主治医の意見書:症状と医学的評価を整理する

  • 神経心理学的検査・リハビリテーションの記録:機能面と実際の活動を確認する

  • 家族の報告書・日常の記録:生活上の変化と支援の必要性を示す

  • 勤務先・学校の資料:就労・就学場面の変化を示す

転院している場合は、初期の画像や診療情報が引き継がれているかも確認します。書類の数を増やすことより、事故から現在までの経過が読み取れることが大切です。

認定理由を確認してから、追加資料を検討する

非該当や想定と異なる等級となった場合は、事故による脳損傷そのものが問題になったのか、障害の程度が十分に伝わらなかったのかを分けて確認します。

前者であれば受傷時の記録や画像、症状の推移、後者であれば検査結果と生活・就労の具体的な支障が、再検討の中心になります。

同じ訴えを繰り返すだけでなく、認定理由と提出済み資料を照合し、不足や食い違いを整理しましょう。医師や弁護士に相談し、追加資料や異議申立てなどの対応を検討します。

まとめ:医療記録と生活の記録をつなげて、障害の実態を伝える

高次脳機能障害の認定では、事故による脳損傷と、現在の生活・仕事への影響を分けて確認する必要があります。画像や検査の数値だけでなく、家族や職場が把握している具体的な変化も重要です。

短い会話や一つの作業ができることだけで判断せず、継続性や周囲の支援まで含めて整理しましょう。事故前後の違いを事実に沿って記録し、医療資料と結びつけることが、障害の実態を伝えるための基本になります。

この記事の執筆者

あきらB

交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。

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