この記事はこんな人におすすめ:
交通事故後、視力が下がった、視野が狭くなったと感じている人
物が二重に見える、ピントが合いにくいなどの症状が残っている人
眼の検査結果や仕事への影響を、後遺障害の申請に向けて整理したい人
交通事故後の眼の後遺障害は、視力低下だけではありません。見える範囲が欠ける視野障害、物が二重に見える複視、ピントを合わせる調節機能の障害、まぶたの欠損や動きの障害なども問題になります。
同じ「見えにくい」という訴えでも、原因や必要な検査、検討する等級は異なります。事故との関係を確認したうえで、どの機能に、どの程度の障害が残ったのかを分けて整理することが大切です。
目次
眼の後遺障害は、症状の種類を分けて確認する
視力障害は、原則として矯正視力で評価する
視野障害は、視力が保たれていても問題になる
複視・眼球運動障害では、見る方向と検査結果を確認する
ピント調節・まぶた・まぶしさなどの障害
事故との関係と、生活・仕事への影響を整理する
申請前や非該当となったときに確認したい資料
まとめ:視力の数値だけでなく、見え方全体を伝える
眼の後遺障害は、症状の種類を分けて確認する
「見えにくい」を具体的にする
眼の障害を検討するときは、まず困っている内容を分けます。文字がぼやけるのか、周囲の物に気付きにくいのか、二重に見えるのかでは、調べる機能が異なるためです。
障害の種類 | 症状や確認事項の例 |
|---|---|
視力障害 | 文字や物の形を細かく見分けにくい。左右それぞれの矯正視力を確認する |
視野障害 | 見える範囲が狭い、一部が欠ける。欠ける場所や広さを確認する |
複視・眼球運動障害 | 物が二重に見える、特定の方向を見にくい。眼の動きや見る方向との関係を確認する |
調節機能障害 | 近くの物などにピントを合わせにくい。調節力や年齢の影響を確認する |
まぶたの障害 | まぶたが欠けた、開けにくい、閉じ切れない。形態と動きを確認する |
このほか、まぶしさが強い、涙が常にあふれるといった状態が問題になる場合もあります。症状の名前だけではなく、その原因と残存する程度を確認します。
眼球だけでなく、神経や脳の障害も関係する
見る働きには、眼球だけでなく、眼を動かす筋肉や神経、視覚の情報を脳へ伝える経路も関係しています。眼の周囲の受傷と、頭部の受傷の両方を確認する必要がある場合があります。
例えば、視神経の損傷、眼球運動に関係する神経の麻痺、脳の損傷による視野の異常などでは、診療記録の確認範囲が眼科だけにとどまらないことがあります。
診断名が付いたことと、一定の後遺障害等級が認められることは別です。どの部位の障害が、どのような見え方の異常につながっているのかを、医師の所見と対応させて整理しましょう。
視力障害は、原則として矯正視力で評価する
裸眼視力の低下だけでは判断できない
後遺障害の等級で問題になる視力は、原則として、眼鏡などで矯正した状態の視力です。裸眼視力が下がっていても、矯正によってどこまで見えるのかを確認する必要があります。
したがって、「事故後の裸眼視力が0.1だから、視力0.1以下の等級に当たる」とは限りません。後遺障害診断書や検査記録では、裸眼視力と矯正視力を混同していないか確認しましょう。
一方、どのような矯正でもよいわけではありません。書籍では、眼鏡で左右の像の大きさなどに差が生じる場合や、コンタクトレンズを医学的に装用できるかが問題になる場合など、矯正方法に応じた取扱いが説明されています。
コンタクトレンズが使えない事情や、眼鏡で十分な矯正ができない事情がある場合は、本人の希望だけでなく、医学的な理由を確認します。認定のために無理に装用するのではなく、担当医に適切な測定・評価方法を相談することが基本です。
片眼だけの障害と、両眼の障害を区別する
視力障害の等級は、片眼の状態だけでなく、もう一方の眼の状態によっても変わります。代表的な例は次のとおりです。
視力障害の状態 | 自賠責の等級 |
|---|---|
両眼が失明した場合 | 1級1号 |
両眼の視力が0.1以下となった場合 | 6級1号 |
片眼が失明した、または片眼の視力が0.02以下となった場合 | 8級1号 |
両眼の視力が0.6以下となった場合 | 9級1号 |
片眼の視力が0.06以下となった場合 | 9級2号 |
片眼の視力が0.1以下となった場合 | 10級1号 |
片眼の視力が0.6以下となった場合 | 13級1号 |
この表は代表例であり、すべての組合せを掲載したものではありません。例えば、片眼の失明に加えて、もう一方の眼にも一定以上の視力低下がある場合には、別の等級が定められています。
両眼の視力障害は、左右を別々に認定して単純に足し合わせるものではありません。両眼の状態に対応する等級や認定上の取扱いを確認します。また、事故前から障害があった場合は、その状態と事故による変化を分ける必要があります。
視野障害は、視力が保たれていても問題になる
視力と視野は違う機能
視力は、物を細かく見分ける能力です。これに対し、視野は、一点を見つめたときに同時に見える範囲を指します。
中心にある文字を読めても、周囲の範囲が欠けているために、人や障害物に気付きにくい場合があります。このため、視力検査の数値が良いことだけで、眼の後遺障害がないとはいえません。
視野の障害には、半盲症、視野狭窄、視野変状などがあります。自賠責の等級表では、両眼にこれらを残す場合は9級3号、片眼に残す場合は13級2号が定められています。
「狭く感じる」だけでなく、測定結果を確認する
視野障害は、本人の感覚だけで等級を判断するものではありません。書籍では、ゴールドマン視野計による測定や、所定の視標を用いた8方向の視野の角度に基づく評価が説明されています。
「視野が半分になった気がする」という説明と、認定上の測定基準を満たすことは同じではありません。検査でどの範囲が欠け、どのような障害として評価されているかを確認します。
脳や視神経などの損傷部位と、視野の欠け方との関係が問題になる場合もあります。検査結果の用紙に加え、その結果を医師がどう解釈しているかが重要です。
複視・眼球運動障害では、見る方向と検査結果を確認する
正面で二重に見えるか、正面以外で生じるか
物が二重に見えることを複視といいます。眼の向きをそろえる筋肉や神経の障害などが原因になる場合があります。
自賠責の等級表では、正面を見た場合に複視が残るものは10級2号、正面以外を見た場合に複視が残るものは13級3号とされています。ただし、二重に見えるという訴えだけで、この等級に当たるわけではありません。
書籍では、本人が複視を自覚していることに加え、眼筋の麻痺など明らかな原因があること、ヘススクリーンテストで所定の像のずれが確認されることなどが認定上のポイントとして説明されています。
「二重に見える方向」と「検査で確認された眼の動き」を対応させることが大切です。正面、上方、下方、左右のどの方向で困るのか、近くと遠くで違いがあるのかを具体的に伝えます。
片眼で見ても二重になる場合などは、原因を分ける
複視には、両眼で見るときに生じるものだけでなく、片眼で見ても像が二重になるものがあります。書籍では、水晶体の位置の異常などによる単眼性複視について、視力障害として評価する取扱いが説明されています。
したがって、すべての「二重に見える」という症状を、10級2号や13級3号の複視として扱えるわけではありません。どのような仕組みで生じているのかを、眼科の診察・検査で確認する必要があります。
眼球そのものを動かせる範囲が制限される運動障害では、頭を固定して眼を動かし、直視できる範囲である「注視野」などが問題になります。これは、眼を動かさずに見える範囲である視野とは区別します。
両眼の眼球に著しい運動障害を残す場合は11級1号、片眼の場合は12級1号が定められていますが、複視との関係を含め、残った障害全体の評価が必要です。項目ごとに等級を機械的に加算することはできません。
ピント調節・まぶた・まぶしさなどの障害
調節機能障害は、年齢などの影響も確認する
調節機能とは、近くの物などを見る際にピントを合わせる働きです。事故後に近くの文字が読みづらくなった場合などには、視力だけでなく調節機能の確認が必要になることがあります。
両眼の眼球に著しい調節機能障害が残る場合は11級1号、片眼の場合は12級1号が問題になります。書籍では、調節力が通常の場合の2分の1以下に減じたことなどを基準として説明しています。
もっとも、調節力は年齢によっても変化します。障害のない眼との比較や、年齢に応じた調節力との比較が必要で、年齢・健眼の調節力によって評価対象とならない取扱いもあります。単に「近くが見づらい」という理由だけで認定されるわけではありません。
まぶたは、欠損と動きの障害を区別する
まぶたの障害では、一部が失われた欠損と、開け閉めが十分にできない運動障害を分けて確認します。見た目だけでなく、閉じたときに角膜を覆えるか、開けたときに瞳孔が覆われてしまうかなどが問題になります。
例えば、片眼のまぶたに著しい欠損が残る場合は11級3号、片眼のまぶたに著しい運動障害が残る場合は12級2号が定められています。両眼の場合や一部の欠損などでは、別の等級が問題になります。
傷あとがあることと、まぶたの欠損・運動障害があることも同じではありません。外貌の傷あととしての評価が問題になる場合には、機能の障害との関係を整理します。
まぶしさや涙の症状も、原因の確認が必要
外傷性散瞳では、瞳孔の光に対する反応が障害され、まぶしさが問題になる場合があります。また、涙の通り道の損傷などによって、常に涙があふれる状態が残ることもあります。
書籍は、これらについても状態に応じた相当等級の評価を説明しています。ただし、「まぶしい」「涙が出る」といった症状だけで、一定の等級が決まるわけではありません。対光反射、涙道の状態、症状の持続性、労働への支障などを確認します。
事故との関係と、生活・仕事への影響を整理する
事故前の状態と、受傷後の変化を比較する
眼の障害では、事故前からの近視や眼の病気などと、事故による変化を分けることが重要です。外傷性白内障、網膜の損傷、視神経の損傷などの診断がある場合でも、受傷状況や診察所見、発症・治療の経過を確認します。
事故前の視力検査結果、眼鏡の処方記録、眼科への通院歴などが比較の資料になる場合があります。以前からあった症状を隠すのではなく、事故前に何ができていて、事故後にどう変わったかを具体化しましょう。
頭部の治療が優先され、眼科の受診が後になった場合などは、その経緯も整理します。受診の遅れだけで直ちに結論を出すのではなく、当初の診療記録に眼の訴えや所見がないか、いつ症状に気付いたかを確認します。
日常の困難を、作業ごとに説明する
眼の障害は、職種や作業環境によって支障の現れ方が異なります。「仕事がつらい」という説明だけでなく、次のような場面を具体的に整理します。
書類や画面の文字を読むために拡大表示や休憩が必要になった。
周囲の人や物に気付きにくく、移動や物の運搬に支障が出た。
特定の方向を見ると二重になり、確認作業が難しくなった。
細かい部品を扱う作業や、近くと遠くを交互に見る作業に時間がかかる。
担当業務や勤務時間が変わり、職場の配慮を受けている。
これらは記録する項目の例であり、症状を当てはめるための一覧ではありません。実際に生じていることを、頻度や作業時間、事故前との違いとともに記録します。
生活・仕事への影響は重要ですが、それだけで医学的な障害や事故との因果関係が証明されるわけではありません。検査・診療の資料と組み合わせて説明することが必要です。運転や危険を伴う作業の可否については、自己判断で無理をせず医師に相談してください。
申請前や非該当となったときに確認したい資料
症状に対応する検査結果がそろっているか
後遺障害の申請では、診断書に病名だけが記載されている状態より、どの機能にどの程度の障害が残ったかを確認できることが重要です。
資料 | 主な確認点 |
|---|---|
初診からの診療録・紹介状 | 受傷状況、症状が現れた時期、眼科受診までの経緯 |
視力検査の記録 | 左右の裸眼・矯正視力、矯正方法、事故前後の変化 |
視野検査の結果 | 検査方法、欠ける範囲、左右それぞれの評価 |
眼球運動・複視の検査結果 | ヘススクリーンテストなどの所見、原因、複視が生じる方向 |
調節機能・まぶた等の所見 | 残った障害に対応する測定結果や形態・動きの記録 |
手術記録・画像・医師の説明 | 損傷部位、治療内容、事故との関係を説明する根拠 |
後遺障害診断書・仕事の資料 | 症状固定時の状態、業務変更や勤務上の支障 |
すべての人にすべての検査が必要なわけではありません。検査の選択と医学的な解釈は担当医に確認し、残存症状に対応する資料を整理します。
非該当の理由と、資料の不足を分けて検討する
非該当や想定と異なる等級になった場合は、障害の程度が基準に達していないとされたのか、検査結果の評価が問題なのか、事故との関係が認められていないのかを確認します。
例えば、矯正視力は保たれているものの、別に視野や眼球運動の障害が疑われる場合には、視力以外の症状が適切に調べられていたかを検討します。一方で、本人の見えにくさだけから、未確認の障害があると決め付けることもできません。
異議申立てなどを検討する際は、何を追加の資料で説明する必要があるかを明確にします。検査結果を都合よく選ぶのではなく、結果に違いがある場合は、その理由について医師の説明を求めることが大切です。
まとめ:視力の数値だけでなく、見え方全体を伝える
交通事故後の眼の後遺障害は、視力、視野、複視、眼球運動、調節機能、まぶたなどに分けて検討します。裸眼視力だけで判断せず、左右の状態や矯正方法、症状に対応する検査結果を確認することが重要です。
事故前後の変化、医学的な所見、生活・仕事への具体的な影響を整理し、どの機能の障害が残っているのかを明らかにしましょう。複数の症状がある場合も、等級を単純に足し合わせず、障害同士の関係を確認する必要があります。
本記事は一般的な情報を説明するもので、個別の診断、検査の必要性、等級認定を判断するものではありません。医療上の判断は担当医に、申請資料や損害賠償の対応は弁護士に相談してください。
この記事の執筆者
あきらB
交通事故被害者の方が適切な賠償金を受け取れるよう、法律的な観点から初期対応のアドバイスや記事の執筆、内容の検証・監修を行っています。
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